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2011.04.14

<新連載>元「フライデー」名物記者・新藤厚の「往事茫々日記」第15回「東日本大震災と敗戦(上)」

 退屈な、しかし果てしなくつづくものと疑いもしなかった昨日までの「日常」が圧倒的な自然災害によって暴力的に断ち切られた。バブル以降「失われた二〇年」のだらだらとした、それでも強固だった日常という連続性が一瞬にして「非日常」に一変した。昨日までの時間は目の前でぷっつりと消えた。テレビ画面に映し出されるパニック映画のような「現実」に失語した。文字どおり言葉を失ったのだ。唖然、興奮、放心、失意、怒り、不安、恐怖という生の感情に言の葉が届かない。ただ得体の知れない無力感と喪失感だけが重い空気のように身をつつんでいる。たれしも傍観者でいることはできない。「3・11」からひと月を過ぎて、ようやく漠とした「天然の無常」を見つめる老爺が、ぽつねんといる。いまはただ頭を垂れて膝を屈し沈痛のまなざしで、この不条理に向き合うしかあるまい。書くことに意味はない。まして「有事」のいまは与太記事を書く場合でもない。それでも生者の傲慢は今日も日々の飯を喰らい「震災後」という新しい時代の時間に流されて生存をつづける。このちっぽけな暮らしは少し質を変えてつづいている。不謹慎の誹りを甘受してもう少し連載をつづける。「3・11」は敗戦の申し子である団塊世代の愚老には遅れて来た「八月十五日」の宿命的な追体験のように思われてならなかった。その前日、三月十日は東京大空襲の記念日だった。日露戦争奉天会戦、戦勝の日「陸軍記念日」である。その日の未明から帝都の下町はB29の焼夷弾で焼きつくされた。「川向う」の葛飾にはほとんど爆弾は落ちなかったから、少年の頃「夕焼けのように真っ赤に照り映える夜空がきれいだった」という大人の話をよく聞いた。地震と津波で何もかも壊され流された荒涼とした風景を、みちのく太平洋岸の「焦土」に見た。肉親の命と住居、職場、生活のすべてを失った罹災者たちの呆然とした姿を見た。そこにあった町さえも跡形もなく消え失せたのだ。その地は再び多くの「いのち」を奪い去った。みちのくは平安の昔、坂上田村麻呂の蝦夷征伐以来、いくさに勝ったことのない土地である。古い記録では貞観地震津波以来、三陸は数十年に一度の大津波に幾度となく襲われ大きな被害を出してきた。今回は明治三陸、昭和三陸と百十五年の間に三度目の大津波である。これを「想定外」とはいわない。統計的には「予想どおり」の災害である。それでも人は昔から大自然の前には無力な存在であることに変わりはなかった。みちのくには夏場にオホーツクからの北風、山背が吹く。その寒風は冷害の「飢饉」をもたらす。一方で「日照リノ夏」は旱魃で田畑は実らない。冬の寒さも厳しい。東北は近代までどの地方よりも「餓死」と背中合わせの過酷な風土だった。つい六、七〇年前までみちのくでは間引きも、娘の身売りもあった。石原莞爾の満洲建国の夢も、二・二六事件の青年将校の憂国もその端は飢饉による東北の疲弊にあったのではなかったか。そういえば地震で東京の最初の死者はあの「戒厳令司令部」(九段会館)で出た。深沢七郎は『東北の神武たち』でその風土を神話的民話として書いている。だから宮沢賢治は「雨ニモ負ケズ」と唱えるしかなかったのだ。農村社会運動だけでは救われない。村の「宗教者」にならざるを得なかったのはその自然の過酷さにある。みちのくの人間ほど自然を畏怖し、自然に忍従する「耐える民」はいない。いま少しくこころ安らぐのは被災地にボランティアという名の多くの宮沢賢治をみるからである。そこには寺田寅彦が『日本人の自然観』で書いた「天然の無常」という身に染みついた生きる「かなしみ」が連綿としてある。戦後は集団就職と冬場の出稼ぎで首都の経済成長を支える名もなき「地上の星」(中島みゆき)となった人々は東北からやって来た。だから老耄剥き出しの首都の知事の「天罰」発言はいくら撤回してみせても許せないのである。この傘寿にならんとする耄碌老人の世迷言には黙っていられないのである。一つ覚えの「物欲、金銭欲、性欲だけの日本人」に対する「天罰」だと思うなら、きっと首都直下型大震災が近い将来来ることになるのだろう。その前に放射能の「死の灰」が降るかもしれない。都民の不幸はこんな「裸の王様」を首長に戴くことだ。今回の選挙で致命的だったのは対立候補が全員ホーマツという悲喜劇さある。ついでに言えば三十年程の雑誌記者生活で、その傲岸不遜に殴りかかりたくなったのは青嵐会時代の石原とJC会長だった麻生太郎だけである。
2011年4月13日掲載。この記事の続きを見たい方は、本紙改訂有料ネット記事アクセス・ジャーナルへ


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