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2011.03.08

<新連載>元「フライデー」名物記者・新藤厚の「往事茫々日記」第14回「取材記者をはじめた頃の思い出」

東信濃では渓流釣りが解禁になった。その前日に「かみゆき」が降って三〇糎近い積雪となった。東の川上から降る雪、太平洋の低気圧がもたらす湿雪は早い春の兆しのボタ雪である。春を待ちわびる心持ちは雪国や寒冷地に暮らしてはじめて分かる。老人には冬眠から目覚める日も遠くない。里山では早春の使者である福寿草も咲いたらしい。新聞で目黒の老夫婦殺傷事件の報道を見てある種の感慨に襲われた。人並みに仄聞はしていたがこの国の、特に都会の防犯カメラ網はかなり充実していたらしい。いつの間にか英国並みの「監視社会」が出来上がっていたようだ。犯人は同世代の団塊老人だった。高速バスに本名で乗るあたりの間抜けさに昭和の感性が窺える。それにしてもこの事件がカネ目当ての行きずりの犯行とは、昔の事件取材者の感覚からは大きな違和がある。昭和のアナロジカルな常識では、あれは「依頼殺人」とみて平仄が合うのである。きっと盆暗な老人はこうして時代から取り残されていくのだろう。四半世紀ほど前の話だ。都会の主要道路に「Nシステム」というカメラ監視装置が導入された。以前からあった「オービス」などのスピード違反取り締まりカメラの技術が進歩して、読みとったナンバープレートを瞬時にコンピューターに送るシステムである。「スゴい機械ができたんですよ」と教えてくれたのは亀有警察暑の交番勤務の巡査だった。地元で可愛がっていた若いオマワリだ。交番に「もうすぐ、こういうクルマが通るから停めろ」と、本庁の通信指令から指示が来る。大半は盗難車かクルマでの家出人だったらしい。発見された方は「どうして判ったんですか?」と不思議がった。まだ葛飾区内の水戸街道にも二、三台しか設置されていなかった。早速、警察庁の交通部だったかに取材をかけた。「捜査のためにも公にしたくない。書かないでもらいたい」と頭を下げてきた。「ぢゃ“貸し”にしておきますから、今後よろしく」。その準キャリには何度か被疑者の住所割りや前科照会で便宜を図ってもらった。厳密に言えば「国家公務員法違反」だろうが、義理や人情はこの国の文化である。「個人情報」などという欺瞞的な用語もなかった。プライバシーなどという概念もムラ社会では稀薄だった。そういえば昔はたれでも他人の戸籍を取ることができた。事由に「取材」と書き込めば役所は戸籍謄本の青焼きを出したのである。最初に規制をかけたのは「人権府政」の京都だったような気がする。革新府政、蜷川虎三の時代である。それが全国に広がり途端に取材が面倒になった。今回は取材記者をはじめた頃のことを記す。古き良き時代へのほろ苦くも甘美なノスタルジーである。
 2011年3月8日掲載。この記事の続きを見たい方は、本紙改訂有料ネット記事アクセス・ジャーナルへ

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