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2015年6月23日 (火)

<記録>秘密保護法違憲訴訟の林克明(原告)尋問調書

――原告ら代理人(堀)
(甲第17号証を示す)
 これは陳述書ですけれども、林さんが作られた陳述書ですね。
林 はい、間違いないです。
――第1項というところで、申立人林克明の経歴ということが書いてありますけれども、ここに林さんの経歴、それからフリージャーナリストになってからの仕事の内容等について書いてあるということですね。
林 はい、そうです。
――内容的にはこのとおり間違いないということですか。
林 間違いないです。
――それで、まず世界のジャーナリズムから本件の秘密保護法がどのように評価されているかについてお伺いしたいと思います。この秘密保護法というのは世界のジャーナリズムから見てどのように評価されているんでしょうか。
林 例えばパリに本拠を置く国際ジャーナリスト組織で、国境なき記者団というのがあります。ここは毎年、世界の報道自由度ランキングというのを発表しておりまして、 日本は2013年から今年にかけて、53位から61位に順位を下げています。ちなみに2012年くらい、3年前はまだ12番とかなり高かったのが、急激に落ちています。
――随分順位が下がっているわけですけれども、その理由は何なんでしょうか。
林 原告団からここの団体に問い合わせたところ、秘密保護法が施行されたと、それが61位に下がった理由だという説明を受けました。
――(甲第81号証を示す)
 これが今言われた取材の結果を記載した書類だということですね。
林 はい、そうです。
――この国境なき記者団というのはそのほかにどのような活動をされているんでしょう。
林 100人の報道ヒーローというものを選んでおりまして、直近では原告団の1人である寺澤有さんが、日本人としてはただ1人選ばれています。その受賞理由というのがまさに秘密保護法違憲訴訟、つまり本訴訟を提起した、これが受賞理由になってます。
――国際的に秘密保護法が強く批判されていると、それを示すような事例としてほかに何かありますでしょうか。
林 公益社団法人の日本外国特派員協会というものがありますけれども、ここが今年初めて報道の自由賞という賞を創設して、このときにはですね、元通産官僚の古賀茂明さん、そしてイスラム国に殺害されたジャーナリストの後藤健二さんが受賞されています。
――今説明された報道の自由賞というのはどういう賞なのでしょうか。
林 この賞は今年初めて創設されたもので、 日本外国特派員協会によりますと、安倍政権が発足してからメディアに対する圧力を強めてきたと。
 その最たるものが秘密保護法であると。この秘密保護法に抵抗するジャーナリストたちを日本外国特派員協会としては支援したいと、そういう強い意図の下にこの賞は創設されたと、そのように説明を受けています。
 受賞者の1人である古賀茂明さん、この方は本件訴訟で証人申請されておりますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
林 当裁判所において是非古賀茂明さんの証人採用をやってくださるように強求めたいと思います。
――もう1人の受賞者である後藤健二さんですね、この方の事件、イスラム国による人質、それから殺害事件ですかね、これについてお伺いしたいと思います。この後藤さんの事件に関する真相あるいは政府の対応などについて、少しは真相は解明されているんでしょうか。
林 ほとんどと言っていいほどこの事件については解明されていません。特に問題だと思ったのは岸田外務大臣、安倍首相、菅官房長官、これらの重要な人物が、この事件には特定秘密が含まれていると、それをいちいち開示することはとてもできないというようなことを述べて、そのとおりいまだに分かっていないわけです。
――(甲第108号証を示す)
 今の3人の閣僚の発言に関する、これは議事録なんですかね、この内容はこのとおりということでよろしいわけですね。
林 はい、そうです。
――詳細はこれを見ていただければ分かるということですね。
林 はい。
――この3者の発言を見て林さんはどのように思われましたか。
林 つまりこの人質事件について、深く追及したりすると、それはただじゃおかないぞというような、ジャーナリズムに対する威嚇だと私は感じました。
――要するに、取材に対する圧倒的な牽制といいますか、抑圧というか、そういうものだというふうに感じたということですか。
林 そういうふうに感じました。
――このイスラム国の問題について、林さんとして独自に取材をされたようなことはございますでしょうか。
林 はい、取材を試みました。ただ、今言ったように秘密保護法に絡められると非常に困ったことになりますので、誰が見ても正当であるというふうな方法を選びました。つまり、この事件に対して、まず行政文書を開示請求をしようと思って、そこから始めました。
――具体的にはどのような開示請求をされたんでしょうか。
林 外務省と内閣府に対して2つの点を請求しました。1つは人質の解放に絡む一連の文書一式。2つ目は、安倍首相が海外で、イスラム国絡みで人道援助をするということを言っていますので、それに関する文書一式。この2点を開示請求しました。
――(甲第82号証、甲第85号証、甲第90号証、甲第91号証を示す)
 これは今言われた開示請求書で、甲第82号証と甲85号証、これはいわゆる外務省に対するものということですね。
林 はい、そうです。
――それから甲90号証と甲91号証、これは内閣府関係に対するものと。
林 はい、そのとおりです。
――内容的には同じということですね。
林 はい。
――それで、この開示請求に対して開示はされたんでしょうか。
林 まず外務省からですけれども、その文書の期限延長を知らせる通知が届いていまして、いまだに何も開示をされていないです。
――内閣府はどうですか。
林 内閣府に対しては2点請求したんですが、 2点とも文書が不存在という理由で開示されませんでした。
――(甲第99号証、甲第100号証を示す)
 これがその不開示決定通知書ですね。
林 はい。
――この理由を見てみますと「本件文書について、作成及び取得をしておらず保有していないため」となっていて、要するに文書が存在しないという回答だったわけですね。
林 はい。
――通常、不開示の場合にはいわゆる不開示事情が存在するとか、そういう形で開示しないというケースが多いんですけれども、通常これまでの林さんの経験で不開示になる場合にはどのような扱いがされていましたか。
林 これまでの私の経験では、不開示の場合はその部分を墨塗りにして一連の文書が出されるということになっていました。ただ、今回の場合は文書不存在という一言で、全く文書が存在しないということですから、これはあり得ないことだと思いました。
――結局文書不存在ということですから、情報はー切知らされないということになるわけですね。
林 そうです。
――当然取材も不可能ということですか。
林 もう、かなりのところが止まってしまいました。
――開示請求は、内閣府の関係では不開示ということで終わったわけですけれども、これ以外に、取材とかアプローチをされたようなことはございますか。
林 その文書を請求した以外に、内閣府の担当部署に連絡して、是非いろんなことを教えてほしいということで、最初話をして、その後にファックスで11項目の質問状を送りました。
――(甲第92号証を示す)
 これが内閣府宛ての質問書ということですね。
林 はい、間違いないです。
――11項目を質問したと。
林 はい。
――これに対する回答はどういうものでしたか。
林 今の質問項目の5番目にある政府関連の会合について教えてくれと、その部分についてはホームページを見てくださいと、それ以外のものは全ては外務省に聞いてくださいと、そういう答えでした。
――林さんとしては外務省のほうに問合せをされたんでしょうか。
林 はい、問合せをしまして、全く同じものではないですが、独自に質問項目を書いたファックスを送って、その到達した直後に連絡をして、お話を聞きました。
――(甲第93号証を示す)
 これがその外務省に対する質問事項ということですね。
林 はい、そうです。
――具体的にこの質問事項を出して、担当者とやり取りのようなことはされたことはあるんでしょうか。
林 はい、実際にやり取りはしましたけれども、例えば亡くなった後藤さんの家族の人たちとの接触については、何回も面談したり電話をしたり、いろんな面で接触をとり、ケアもしていたと、そういう説明を受けたんですね。それに対して、例えば頻繁にといってもどのくらいなのか、せめて回数で教えてくれないかというようなアプローチをしたんですけれども、回数も教えることはできないという回答でした。
――それ以外にやり取りはありますか。
林 それとですね、今回の検証委員会が出している報告書というものが出ていますけれども、その有識者に対して出した情報というのが重要ですから、それのせめて一部でもいいから教えてくれないか、文書でも言葉の説明でもいいからお願いしますということを言いましたら、それは内閣府に聞いてくださいと言われました。
――そうすると、内閣府では、先ほどの開示請求では文書不存在ということでしたよね。
林 はい。
――すごい回答に矛盾がありますね。
林 はい、文書不存在って内閣府からは回答が来ているのに、外務省ではそれに関する一連のことは全て内閣府、いや、官房という言い方をしていましたけれども、官房に聞いてくださいと。これはやはり文書は不存在ではなく、存在はしているということだと私は理解しました。
――秘密保護法の関係で不存在と言わざるを得ないということなんでしょうか。
林 そういうことだと思います。
――それでは今の話に出ました検証委員会の検証報告についてお伺いします。(甲第97号証を示す)
 これは検証報告書ですね。
林 はい。
――これは読まれましたか。
林 はい、これは全て、最初から最後まで全部読みました。
――それを読まれて、この内容についてどういうふうに思われましたか。
林 これでは詳しい内容が全然明らかにされていなくて、とても検証報告と呼ぶに値しないものだということが言えます。例えばですね、イスラム国と接点を持つ数少ない日本人として、イスラム法学者の中田考さん、そしてジャーナリストの常岡浩介さんがいたわけで、このお二人が人質絡みで現地に行こうとしていた矢先に、警視庁の公安部外事第3課が強制捜査に入って、出国を妨害してしまったという事実がありますけれども、この事件については全く報告書では触れられていません。これはですね、秘密保護法とフリージャーナリストの関係を明らかにする上で非常に重要ですので、今、御本人がそちらのほうに傍聴に来ていらっしゃいますけれども、是非この当裁判所において、ジャーナリストの常岡浩介さんの証言を是非とも採用してほしいと思います。
――(甲第72号証を示す)
 今の常岡さんの事件に関する準抗告とかされているわけですけれども、その関係の決定ということでよろしいですね。
 おっしゃった以外のジャーナリストあるいはフリージャーナリストの立場から見て、検証報告の内容で、林さんがこれはとても見過ごせないと思われた点はございますでしょうか。
林 危険地域に渡航する邦人の動きを制限しようというような意図が、はっきり報告書の中に出ていると思いました。
――(甲第97号証を示す)
 39ページを示します。この部分でしょうか。
林 そうですね、ここでは今の渡航情報では法的な強制力はないから、今後そういったところに行く邦人に対しては法的措置も検討するというような意味のことも書かれています。
――これで見ますと、39ページの下から2番目の丸のところに書かれているということですね。
林 はい、そうですね、こういうことが気になりました。
――40ページを示します。これはいわゆる有識者の指摘によるんでしょうけれども、この点はいかがですか。
林 ここの有識者の見解のところなんですけれども、大手報道機関とフリージャーナリストは同列に扱うことはできないということをまず1点言っておいて、その後に大手マスコミの社員が現地に行かないで、フリージャーナリストにアウトソーシングしているということが続けば、今後も同じことが起こりうるということなんですけれども、これは見方によれば大手とフリーを差別しているようにも取れますし、後半の2点目の部分は幅広く、フリーだけでなくて、既成の大手メディアもこういった海外の取材を制限するような方向に動くんじゃないかというようなことを、この部分から見て取りました。
――その渡航制限ですけれども、具体的に最近そのような事例はあったんでしょうか。
林 はい、新潟在住の杉本さんという写真家の方は、外務省からパスポート返納命令を受けて返さざるを得なかったということがありますし、つい先月も鈴木さんという女性、若い女性ジャーナリストが現地に取材しようとして、 トルコの空港から強制送還されてしまったと、そういう具体的な事件もありました。
――要するに、この検証報告書を見ると、今後ジャーナリスト、あるいはフリージャーナリストを含めてですけれども、その取材活動とか行動に対する制限をしていこうと、そういう方向性が見えているということでしょうか。
林 はい、そういう方向が見えていると思います。
――この検証報告書全体を通して見えることは、林さんとしてはどういうふうに思われますか。
林 一番の問題点は検証委員会が有識者に対して出している一連の情報、これが一切明らかにされていないということが問題であって、これがそのまま何も追及されないで、認められてしまうと、秘密保護法ということを通して、今後このような問題が起きたときに、本当のことは一切外部に出ない、そして取材もできなくなってしまうという心配があると思います。
――この検証報告書はそのことを示しているということですね。
林 はい。
――それから、林さんのほうでは国会の情報監視審査会についても取材されたということですけれども、具体的にはどういうことを取材されたんでしょうか。
林 この審査会のメンバーで、もちろん国会議員の皆さんは公表されていますけれども、実際に細かなことをする事務方の方についての情報が余りにもなかったので、そこを知ろうとしました。特にそういうことに関わる人たちは適性評価を受けるわけですから、実際にこの適性評価がどのように運用され、やられているのか、これについて知ろうと思いました。
――具体的に担当職員の数とか実態とか、あるいは適性評価の実態、、これは分かりましたか。
林 それが全然分からなくて、私も質問を5項目に絞ってファックスで送り、それから電話でも連絡していろいろ聞いたんですけれども、その回答というのは、全てにおいて回答は差し控えさせていただきたいという返事を頂きました。
――(甲第94号証、甲第95号証を示す)
 甲94号証が先ほどおっしゃった質問事項ですね、それと甲95号証といのがそれに対する回答ということで、一切答えについては差し控えたいと。
林 はい、全く回答がなかったです。
――この間林さんは、内閣府、外務省、あるいは国会のほうの事務局に取材されたわけですけれども、これらの取材を通じて、どういうふうなことが分かりましたか。
林 秘密保護法というものを使えば、何から何まで秘密になってしまって、本当のことが明らかにされないんだと、改めてこの秘密保護法は違憲であるということを確認してもらいたいと、改めて思いました。
――最後に、本件訴訟はフリーランスの表現者の方々が原告となって起こして、これまで裁判をやってきたわけですけれども、その思いとか理由について最後に述べていただきたい。よろしくお願いします。
林 今日本のジャーナリズムというのは本当に危機的な状況を迎えていると思います。例えば昨年のいわゆる朝日新聞バッシングというのもありましたし、今年に入ってから、テレビ朝日の報道ステーションに対する官邸からの圧力、そういったことも問題になっています。またNHKの報道は基本的に政府の意向に沿ったものになっている。こうしたことで本来のジャーナリズムの役割が果たせない状況になっています。こういう中で特に直接の規制を受けない私たちフリーランス表現者、ルポライター、フリーライター、ジャーナリスト、映画監督、報道写真家、あるいは編集者、こういう我々表現者が何とか果敢に取材しようとしているわけですが、そういう人たちに対して秘密保護法を引っ掛けられていろんな規制を受けてしまうんじゃないかと、それは何としても避けたいという思いもあってこの訴訟を提起しました。
 特に法が定める報道従事者という言葉がありますけれども、ここに今言った我々フリーランス表現者、ルポライターとかジャーナリストとか映画監督とか報道写真家、こういう人たちをきちんとした報道従事者だということを認めてもらうためにもこの裁判を提起しました。
 最後に一言付け加えさせていただきますと、今日本は大変な危機に陥っていると思います。国会で審議されている戦争関連の法案もありますし、そのこととこの秘密保護法というのは非常に連動していると思います。ですからこの裁判所において、この秘密保護法が違憲であるというような、歴史的判決を下していただけるように、心から強くお願いしたいと思っています。
――裁判長
 後藤さんの事件のことについて幾つか取材をされたということで、書証としては甲92号証、甲93号証いうものが出ましたけれども、これはどちらかというと表立った取材に対する応対ということのお話だったように思いますが、何かそれ以外でこの関連あるいはそれ以外でも結構ですけれども、御主張されているような、この法律ができたがためにより取材が困難になるというような事情がもしありましたら、更に何か付け加えていただけると有り難いですが。
林 例えばこの人質事件に関しても、今日お話ししたのはいわゆる表の取材といいますか、オフィシャルな感じなんですけれども、遺族の方とその遺族の方に接触しているような方にもちょっとお話を聞いたりとかはしましたけれども、あんまりそこを進めてしまうと、やはりちょっと問題かなというような感じだったので、そこは途中でやめて、今日お話ししたような、正面からというか、文書開示請求であるとか広報を通して担当部局を紹介してもらって、そこの担当者から話を聞くということをやらざるを得ませんでした。

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<記録>秘密保護法違憲訴訟の寺澤有(原告)尋問調書

――原告ら代理人(山下)
(甲第10号証を示す)これは寺津さんの陳述書ですね。
寺澤 はい。
――ここに署名と印鑑がありますが、これは御自分で押されたものですね。
寺澤 はい、そうです。
――内容も御自分で作られたと。
寺澤 はい、そうです。
――経歴等はここに書いてある通りということですね。
寺澤 そのとおりです。
――今日は陳述書にないこともお聞きします。寺澤さんはこれまで自衛官に対する取材をしたことがありますか。
寺澤 はい。
――これまではどういう方に取材をしていたんでしょうか。
寺澤 いろんな自衛官あるいは防衛省職員の方に取材しました。
――取材する中で、具体的に取材をした人から情報を頂いたり資料をもらって、それを記事にしたこともあったんでしょうか。
寺澤 はい、そういうことで何回かスクープの記事を書いて、そのうち何個かは国会でも取り上げられるような問題になりました。
――そのような場合、どういうふうな形で、取材を行ったんでしょうか。  寺澤 様々なケースがありますけれども、基本的には現職の自衛官、防衛省職員の中で、こちらの取材の趣旨、そういった公益性が高いことを防衛省や自衛隊が隠していることを表に出したほうが、結局は防衛省、自衛隊のためにもなりますよという、そういう取材の趣旨を理解してもらった上で協力してもらうと、そういうことです。
――具体的にどういう場所で、どういう方法で取材をしたことがありますか。
寺澤 それは様々ありますけれども、例えば防衛省や自衛隊の施設の中にそういったスクープの材料となる証拠物があるということであれば、その方に手引きしてもらって中に入って、その証拠物を写真撮影したりとか、そういうことをしたこともあります。
――最近、秘密保護法が施行された後ですけれども、自衛官を取材したことがありますか。
寺澤 5月14日に安保法制が閣議決定された直後に自衛官の方を取材しました。
――そこではどういうお話が出たんでしょうか。
寺澤 自衛隊員に隊員家族連絡カードというものが配付されて、それはこれまで自衛隊ではなかったそうなんですけれども、非常に細かく、何かあったときのために連絡先を書けということで、第三家族というところまで細かく、自分らの実家、親ですね、あるいは妻のほう、あるいは兄弟、知人、友人関係、そういったものの連絡先を、携帯のメールアドレスまで書かせるというようなことをやって、自衛隊の中で、なんでこんな安保法制の閣議決定のときにそういうものを書かせるんだ、何かあったときのためと、戦争をやったときのためでしょうということで、非常に内部で問題になっているという話を聞きました。
――具体的に寺澤さんはその隊員家族連絡カード、それ自体を見せてもらったり、又はその写しをもらったということがあるんでしょうか。
寺澤 口頭で説明を受けまして、でも口頭では幾ら詳しく説明されてもやっぱり現物を見てみないと報道できないので、現物のコピーを提供してくれというふうにお願いしました。
――それは提供されたんでしょうか。
寺澤 それは非常に、この秘密保護法の関係で、それはできないということで断られたのを、さんざん説得して、ということがありました。
――最終的に何らかのものが提供されたんですか。
寺澤 結局後日、記入例だけ、スマホの画像で、撮ったものをもらいました。
――それでもそれは公表してはならないという。
寺澤 ええ、 しかもそれは絶対にこれをそのままどこかに掲載したりとか、とにかくどこかほかの人に見せるとか、それはやめてくれということで提供を受けました
――これは先ほど、過去の自分の経験で、施設に入って資料を見せられたり、それで、写真を撮ったりしたことがあるという経験から照らすと、今回の対応は以前とは異なっていたということですか。
寺澤 その方はまさに20年、30年、自衛官をやっている方で、その方の手引きで自衛隊の施設に入って証拠物の写真を撮ったことがありますし、そのときに、自衛隊の施設に入るんですから、いろいろ当然止める人がいるわけですよね。そちらさんはどなたさんですかと。それをどうするのかなと思ったら、説得して、連れだからということで、入ったというようなことがありました。
――今、記入例1枚を後でスマホでもらったということですが、以前だったらどういうふうになったんですか。
寺澤 そのようなことまでこちらの取材意図を理解して協力してくれる人なのですから、以前だったら別に、記入例はもちろん、書類一式、どのような実施要綱なのかとか、指示文書なのかとか、一式コピーをくれていたと思います。
――次に警察官に対する取材についてお聞きしたいと思います。
(甲第106号証の1ないし3を示す)これは新聞記事ですけれども、これは何に関する記事ですか。
寺澤 それは2009年6月に、栃木県小山市で発生した強盗事件に関する新聞記事です。
――これは狂言強盗だということだったというんですか。
寺澤 それは2009年6月にパチンコのチェーン店を経営する資産家で、なおかつ朝鮮総連の幹部の豪邸に強盗が入ったという事件です。
――これを取材するきっかけは何だったのですか。
寺澤 これは10人くらい強盗で入っているんですけれども、その主犯格とされる人が、10人目の人、逮捕者が2013年5月28日に逮捕されているんですが、その蔭西誠二という主犯格の方から逮捕直後に手紙をもらって、取材を始めました。その方は、その取材をしてもらいたい趣旨といいますかね。つまりこれはですね、その朝鮮総連の元幹部で、パチンコ店経営の鄭小鎔さんという人なんですけど、この鄭小鎔さんのほうから、北朝鮮に送金しないといけないだとか、原資は脱税の金だとか、そういったものが、庭に30億円だかなんだかドラム缶に入っていると。これをとにかく強盗されたことにしたいので、狂言強盗やってくれという話があったので、そういうことだから、出来レースだからと、 しかも警察の家宅捜索を装ってそういうことをやってくれというふうな依頼があってそれをやったところ、実際にはお金がなかったというようなことだったんです。
――その後警察に捕まったということですか。
寺澤 ええ、その警察もですね、狂言強盗だからということで、本人たちはその10人くらいの人たちは、全くそれはただ演技するだけだと思って入ったところ、庭に現金は埋まってなくて、しかも、なんかこれは話が違うなということで、2、30分で退出するんですけれども、そのときにはもう覆面パトカーが外で何台も待っていたと、それでカーチェイスをやって逃げるというような事件です。
――それで何といいますかね、ここで問題になるのは、この事件が狂言強盗という話ですが、何が一番問題になっているんですか。
寺澤 その鄭小鎔さんのほうの依頼だということで、その主犯格のほうに話を持ってきた人聞がいます。その人間はマツダと名乗っていたそうですけれども、その人間は現場にもいました。ところが、その人間は金属探知機を持ってきて、これは米軍が地雷を見付けるために使っている高性能な金属探知機だと。これを使って庭を探せばドラム缶が埋まっている場所が分かるから、これで掘り起こして、それを掘り出せという指示をして、本人もその現場に金属探知機を持ってきていたんですが、その人間は忽然と消えてしまうわけですね。
――そのマツダなる人物。かれはいまだにどこにいるか分からないと。
寺澤 ええ。その人間は金属探知機だけ持って、車もなぜか置いて、遺留品とかがたくさん積んであるのをわざわざ置いていって、警察のほうに証拠を残すような形で置いていって、それでいなくなっているわけです。
――その方は実際どういう人物だと考えられるわけですか。
寺澤 その方は公安警察官か、公安警察官OBか、少なくとも協力者、スパイであることは間違いないと。で、なおかつその、この新聞記事にもありますけれども、鄭小鎔さんのおうちの隣は栃木県警の官舎ですから、その官舎に歩いていけばいいわけで。
――それで、過去に菅生事件というものがありますけれども、それと似たような構造ではないかということですか。
寺澤 はい。菅生事件、私も過去に取材してますけれども、市木春秋さんと名乗る、本名戸高公徳さんという公安警察官が日本共産党に潜入して、日本共産党員を扇動して、自分でダイナマイトを持ってきて、派出所を、菅生村の派出所を爆破すると、そういう自作自演の事件です。
――(甲第104号証を示す)
だからこの事件と、先ほど言われた狂言強盗事件は似た構造ではないかと。
寺澤 非常に似ているというふうに思います。
――それは、取材に当たって障害になっているというのは、何が障害になっているんですか。
寺澤 つまり消えてしまったマツダなる人物を探さないといけないんですけれども、このマツダさんというのは、明らかに特定秘密に当たる方であろうことが容易に分かるわけですね。
――それが取材の非常に障害になっているということでしょうか。
寺澤 はい。付け加えると、マツダさんというのが、新聞記事からも明らかですけれども、現場にいなかったことになってしまっている。警察の捜査では捜査対象になってないと。しかも、そういった狂言強盗だということを幾ら捕まった人たちが供述しても、警察は一切それを採用しないで、ただの強盗事件として処理したと。
――今それは刑事裁判になっているんですね。
寺澤 今その主犯格の人は無罪を主張して、宇都宮地裁の栃木支部で係争中です。
――(甲第103号証を示す)
これは栃木県で起きた女児殺害事件についての新聞記事ですけれども、現在、寺澤さんはこの事件についても取材されていると
寺澤 取材しています。
――この事件について、どういう点が取材の上で障害になっているんでしょうか。
寺澤 この今市事件は、発生のときもちょっと取材したことがあるんですが、昨年、勝又拓哉さんという方が容疑者として逮捕されて、その後自供したということになっているんですが、物証が全然なくて、恐らく冤罪であろうと思われる事件です。
――今取材する上で何か障害になっていることがありますか。
寺澤 物証がないので、じゃあどうする、どう補うんだという話になっている。勝又被告が死体を遺棄したということになっているんですけれども、この勝又被告が死体を遺棄したというそのルートに、Nシステムというようなカメラが付いているわけです。公安警察官が使っているカメラがあるんですけれども、そのカメラの記録、履歴を調べれば、本当にそこを通っているのか、あるいは本人が、車は通っているけれども、運転していたのは本人なのかとか、そういったことも分かるんですが、まさにこのNシステムというのは、公安警察が1980年代後半からずっと秘匿してきた機械なので、これに触れることは本当にできないという感じです。
――(甲第102号証を示す)
これは何でしょうか。
寺澤 これはそのNシステム、通称Nシステム、自動車ナンバー自動読み取り装置の、どういうふうにこれを運用するかということを定めた警察庁の文書ですね。
――情報公開で取ったんですね。
寺澤 はい。
――これの後ろのほうに第9という、後ろから2枚目、下から4行目にありますが、この最後のところは何が書いてあるんでしょうか。
寺澤 これは今まで、このNシステムというのはそもそもは盗難車両を見付けるために設置してますという大うそを警察庁はついていたんですが、これは公安警察が運用しているもので、今まで盗難車両含めて、いろんなこういう刑事の裁判に証拠で出たことが一切ありません。で、この警察庁の文書を見ても、これによって「判明した事項を、公判に証拠として提出してはならないものとする」と明記されているんですね。そうすると、この先ほどの今市事件の取材において、この点は結局全く裁判の証拠にも出ていないということ。「裁判の証拠には出せない、公判に証拠として提出してはならないものとする」というんだから、そもそも存在しないことにしろというデータなのです。それをこちらは暴いて何とかしようとしているんですから、それは秘密保護法違反に当然なるんじゃないんですかね。
――ということで取材が大変困難になっているということですか。
寺澤 はい。
――先ほど自衛官のケースで施設のほうに入って資料を見せてもらったり、写真を撮ったことがあるということですが、警察官に対する取材においても同じようなことはあったんでしょうか。
寺澤 警察に関する取材でも、警察関係の人の手引きによって、警察関係の施設に入って、警察が不正な会計処理をしているという証拠書類をファイルの中から私が選んで、その部屋のコピー機でコピーして持ち出したということがあります。
――それで、秘密保護法が施行された現在において、警察官に対する取材というのは、以前と比べて何か変わったんでしょうか。
寺澤 以前でしたら、今述べたような今市の事件でも小山の事件でも、取りあえず知っていそうな警察官を当たったりとかする、その他もろもろな手を使って何とか真相を明らかにしようとするんですが、今現在この法律があると、先ほどの自衛官の、長年付き合いがある自衛官の対応を見ても分かるように、ちょっと今、そういった特定秘密を扱っている人間に当たることは非常に危ないと、こちら側が危ないということなので、警察関係には当たらないように取りあえずしてます。
――寺澤さんは今回裁判を、本件訴訟を提起された中心の1人ですけれども、どうしてこの裁判を起こそうと思ったんですか。
寺澤 今、菅生事件の話が出ましたけれども、菅生事件でも、1952年発生の事件ですから、もう60年とか前の事件ですが、その60年前に公安警察あるいはこちらにいらっしゃるような内閣情報調査室の方たちとか、そういったところはそういう謀略をやっていたわけなんですが、今現在においてもそういった謀略、非合法な謀略とか陰謀とか言われるものを現実にこの日本で、この自由な民主主義国家と言われる日本で、やっているということを明らかにしなきゃいけないのです。この秘密保護法という法律は、今述べたように全くそれを許さない法律であると、これはとにかく施行されたら取材ができなくなってしまうということで、あらかじめ差止めなどを求めて提訴していたんですが、実際施行されたらこんな有様だと、もう予想通りの展開ということです。
――それでは主尋問の最後に、これだけは言っておきたいということがあったら言ってください。
寺澤 私は今日3つくらい現在取材中の事例を挙げましたけれども、本当だったらこんなところで今私こんなの取材してますなんて、べらベらしゃべるのは本当におかしいことで、だけど裁判所のほうに、ぜひ違憲判決を書いていただきたいと、そのためにはかなり具体的な詳細な材料を提供しなきゃいけないと思ったので、私、手持ちの札でいえばジャックとクイーンとキングとエースがあれば、クイーンとかキングくらいの札、これ3枚切っているわけですから、ぜひこれは違憲判決を書いていただきたいというふうに思います。
――被告指定代理人(田原)
(質問は)ありません。
――裁判官(平山)
先ほど自衛官の協力者の方がいて取材をされているという例を挙げていただいたんですが、その自衛官の方に取材の目的をとくとくと説明をして協力を得られていたというお話があったと思うんですけれども、取材の目的というのはどういうようなことを説明されるんですか。
寺澤 それはいつの場合ですか。
――過去の場合です。
寺澤 過去の場合、いろんなケースがありますから、自衛隊の中で、例えば、やはり同じような予算の、税金の不正な使用というような事案があった場合に、そういったようなことが自衛隊内で続けられているのは良くないから、1回表に出せばそういう悪い慣行というか、そういうこともなくなるんじゃないですかと。
――過去のは予算の不正使用の事例だ、ったということですかね。
寺澤 いや、もう私も自衛隊のことかなり書いているので、今言ったようなことで、予算、税金の不正な使い方であればそういうふうな説明をしますし、天下りの問題であれば、防衛企業に対する天下りの問題でまた問題があれば、またそれに関して、こうやって天下りして便宜供与を受けてと、こういうようなのは良くないんじゃないかと説得して、それぞれ相手違いますよ、それぞれの人を説得して、協力してくれる人は協力してくれると、そういうことです。
――今回妨げられた例というのは、どういった辺りの話についてということなんですか。
寺澤 どういった辺りって、隊員家族連絡カードですか。
――隊員家族連絡カードについて、どういう点で取材に応じてもらったほうがいいんじゃないかというような説明をされるんですか。
寺澤 安保法制が閣議決定された前後に、何かあったときのためにこれ書きなさいと、さっきは言い忘れましたけれども、その隊員家族連絡カードって、実際スマホで、撮った画像を提供してもらったんですけど、見たところ、かなり詳細に連絡先以外にも書かせるんですね。で、健康状態とか特記事項があるんですよ。その特記事項に書かれている記入例が本人、隊員のお兄さんが精神疾患、丸々病院精神科通院中とか書いてあるんです。だから、要するにそのカードを見たら、全自衛隊員に対して適性評価をやるということだなと私は思ったんですよ。
――今の連絡カードなんですけれども、取材先の方の認識としては、それは一応特定秘密にまでに当たらないというお考えで、あなたのほうにスマホで写真を撮ったもので頂いたんでしょうか。
寺澤 いや、これが特定秘密に当たるかなんて、そんな話をし出したら、向こうは何もしてくれなくなってしまうので、とにかくどんなものか、現物のコピーをくれということを強く要求して、それでどうなのかと思ったら、スマホで、撮った画像の、記入例だけをもらったということです。特に特定秘密かどうかというような話は、することはできない。できないですし、さっきも言いましたけれども、それに関連する文書、絶対あるわけです、こういうふうに記入しろとか実施しろというのは。だけどそれは、とてもそれをもらえるところまではいかない、いってないということですね。以前だったら一式まとめてコピーもらえたと思いますけど。
――特定秘密にそれが当たるかどうかは分からないけれども、当たらないとしてもなかなか取材が難しくなったことの例として今お話を頂いたと。
寺澤 そうです。だから、私、陳述書の中で、ほかの人もそうですけれども、取材を受けるほうは別にこれは特定秘密に関する取材かそれ以外か峻別してやることはできないわけですから、それは取材一切受けないというふうになってしまう、というようなことを述べているかと思いますが、つまりそういうような事態も起きている。私はその附属している文書は特定秘密に触れるものがあると思うけれども、実際にはそういうような対応になっちゃっているということですね。

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