カテゴリー「書評」の記事

2020年5月13日 (水)

<書評>『新型コロナウィルス・NEWSウォッチーーコロコロ日記』(ヒグマルコ著。リーダーズノート出版)

51pmznaidvl_sy346_  5月13日現在も、新型コロナウイルスのパンデミックが進行中である。世界の感染者は422万人、死者28万人にのぼっている(日本国内の感染者は1万6761人、死者は691人)。今後、感染の第2波も予想され、まったく予断を許さない。
 本書には、今年1月9日「中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎が発生」の中国・国営放送のニュースから、4月13日「緊急事態宣言は『遅すぎた』が8割」といった国内報道に至るまでの情報が、1日1ページずつ、イラスト入りでわかりやすく綴られている。
Img009 「トランプ大統領、アメリカではコントロールできていると発言」(2月26日)、「タイ国王が女性20人連れてドイツの超高級ホテルに逃亡」(3月29日)といった海外の動向から、「岩手の病院臨時職員がマスクを盗んで転売」(2月29日)、「京大・山中教授が『一日も早く手を打たないと大変なことになる』と強い危機感を表明」(4月2日)といった国内の動向について日を追う形で載せている。興味深いのは大手メディア報道だけでなく、デマやSNS情報も「歴史」の一コマとして触れていることだ。
 生活激変の真っ最中だが、新型コロナ発生から現在に至るまで、いま落ち着いて振り返ってみよう。それはあふれかえる情報を整理し、私たちが置かれている現実を見直すために有意義なことだ。
 著者は神奈川県横浜市出身の「巣ごもり」デザイナーで、40代女性。

(1000円+税)

 

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2020年3月22日 (日)

<書評>『日本人に合ったがん医療を求めて』(水上治著。ケイオス出版)

Img033_20200322195101  がん告知日本人の自殺率の高さ(通常の約24倍!)の大きな原因の一つは、医者の意見を押し付ける傾向があることという。
 わが国の医者は、「命を一秒でも伸ばすが最善の医療」と信じ、転移ガン患者にもしきりに副作用の大きい抗がん剤を勧める。だが、欧米では型通りに勧めて患者が延命よりQOL(生活の質)を大切にしたいと拒否しても「いいですよ」と受け入れ、その後も親身に対応するという。
 もっとも、だらかといって著者は欧米のがん医療がすべてにおいて優れているとはいっていない。
 欧米流の医者と患者のドライな関係、自己主張して徹底的に議論し妥協や調整を図り「合意」を目指すやり方は、「場の調和」を重んじる日本的精神風土には合わないと考える。
 冒頭のがん告知後の突出した日本人の自殺率の高さは、そもそも日本人患者でがん告知を望む者は半分程度で、それにも拘わらず告知するため、欧米人と違ってうつ病にやり易い点もあると見る(日本人は脳内セレトニン代謝が低い事実も)。
 まして、米国ではがん告知とセットになっている余命告知は日本の文化に合わないので止めるべきという。
 本書は、西洋医学を根本としながらも、徹頭徹尾患者側に立ち、高濃度ビタミンC点滴療法を実施したパイオニアの一人でもあり「補完療法」も取り入れる著者が、他の医者、患者、患者の家族に一番伝えたい「本当のこと」が詰まったエッセイ的な内容。
 そして、本書を読めば、がんを宣告され暗闇のなかにいる患者、その家族にも一筋の光明を与えてくれること請け合いだ。
(1450円+税)

 

*なお、本紙・山岡は週刊誌のがん取材で何度もお世話になっている、それは、こんなに患者本位、本音で語ってくれるがん専門医を他に知らないからだ。

 

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2020年1月 5日 (日)

<書評>『日本長寿食辞典』(悠書館)、『徳川ごはん』(mores出版)。どちらも著者は永山久夫氏

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『日本長寿食辞典』(3200円+税)の方はページ数600にも及ぶ大作。
 第一部の食材編では、(1)米・豆・雑穀、(2)汁もの、(3)茶・酒・水、(4)野菜・果物・野菜、(5)魚・海草、(6)卵・肉・乳製品、(7)行事食・お供えのどれが、どんな長寿作用があるが平易に解説。第二部の長寿法編ではまず(1)日本古来の長寿法を取り上げ、(2)ではそれを踏まえた上で現在の100歳時代の新しい長寿法を説いている。
 第三部の長寿者列伝、第四部のことわざから学ぶ不老長寿法も面白く、しかも大いに参考になる。
 健康ブームのなか、特定の食材を濃縮するなど健康効果が疑わしい「健康食品」が氾濫するなか、本書で披露されている知恵を持てば、日々の食事を美味しくいただきながら結果として健康長寿が付いて来るというわけで、まさに本物の長寿健康法。しかもその食材はどこのスーパーでも売っている安価なものばかりなのもうれしい。
 一方の『徳川ごはん』(1800円+税)は、徳川家の15人の将軍が各人、何を食べどう生きたか解説したもの。読み物としても面白いが、結果として、やはり健康長寿の秘訣がぎっしり詰まっている。
 なお、永山氏、若いころは漫画家志望だったそうで、両書のイラストも自身が担当。その腕前はまさにプロであることはむろん、そのタッチは実に深い温かみを含んだ味わいがある。

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2019年11月17日 (日)

<書評>『江戸東京透視図絵』(文・跡部蛮。絵・瀬知エリカ。五月書房新社)

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 東京の街歩きガイド本は、その地の歴史解説を含めたものもすでにいくつか出ている。
 だが、このガイド本の、その地が江戸時代はどんな場所で、どんな出来事があったかの解説は突出してスグれている。まるで江戸時代にタイムスリップし、自分がそこを歩いているかのように引き込まれるのだ。
 その理由はいろいろある。
 本文担当の跡部蛮氏の江戸時代に関する博識さ(佛教大学大学院文学研究科=日本史学専攻=博士後期課程終了)と、跡部氏、江戸切絵図という古地図を持って街歩きする「江戸ぶら会」を主宰しているからそのガイドぶりが見事に一致。おまけに、ふんだんに該当地の江戸切絵図と現在の地図、街並みから標識、歴史物とその説明図などの写真が掲載されている。
 さらに本書が引き込まれるは、和物、歴史物の装画で人気のイラストレータ・瀬知エリカ氏が絵を担当。現在の写真に、江戸時代にその地であった事件や出来事のワンシーンをイラストで描き重ね合わた透視絵図が載っていること。こんなガイド本ないだろう。
 本書では、墨田区両国(赤穂浪士討ち入りの吉良邸)、目黒区中目黒(茶屋坂。目黒のさんま)、台東区千束(吉原遊郭)、荒川区南千住(小塚原刑場と鼠小僧)、港区赤坂(3つの勝海舟邸)、豊島区駒込・文京区本郷(八百屋お七と3つの火事)、新宿区大京町(沖田総司終焉の地)、台東区上野(幕府終焉の上野戦争)各周辺など12話で構成されている。
 この充実ぶり、他にもたくさんの歴史的場所があることを思えば、続編も期待される。
(1900円+税)

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2018年12月12日 (水)

書評『他人の頭を借りる超仕事術』(臼井由妃著。青春出版社)

51ecljjpdvl_sx350_bo1204203200__2 「仕事が多すぎる。なんとか減らしたい」「同じ仕事を繰り返していて、自己成長につながらない」。こんな気持ちで毎日働いている人も多いだろう。
 病身の夫の後を継ぎ、専業主婦から社長に転身した異色の経営者である著者は、「仕事ができる人は、仕事を全部自分でやらない人だ」「仕事量の8割ほどを人に任せ、残りの2割の仕事に集中する人が大きく成長する」と説く。
 そうは言っても、「人に任せるより自分がやったほうが早い」とか「人に仕事を押し付けて、自分は怠けていいのか」と思う方もいるだろう。
 著者によれば、自分にしかできない仕事の見分け方があり、人への任せ方にもコツがあるという。
 まず「自分の棚卸し」で、自分にしかできない2割の仕事を見出す(第2章)。その上で、仕事の8割をいかにして人に任せるのかを具体的にアドバイス(第3章)。任せる相手はどんなタイプか、どうすれば上手に任せることができるのか。・・・この辺りに著者ならではの経営術が垣間見える。
 本書は2011年発行の『仕事の8割は人に任せなさい!』の改訂版。その間、に急速に発達したSNSをいかに利用するかといった点が追加・修正されている。
 年末に本書を読んで、来年からは新しい仕事術を身につけ、自己成長してみてはいかがだろうか。

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2018年9月14日 (金)

『やさしい漢方の本 さわれば分かる腹診入門』(平地治美著)

519ytflnk2l_sx338_bo1204203200__2  著者・平地治美氏は、「アクセスジャーナル」紙上で“健康の勧め”という連載記事を昨年まで計36回にわたって寄稿して頂いたことがある、漢方の専門家だ。
 去る8月、わかりやすいと好評だった『舌診入門』に続き本書『腹診入門』が発売された。
 漢方の診断と言っても、腹診は中国伝来ではなく、江戸時代に独特の発展を遂げた日本独自の診断方法とのこと。第1章でそうした歴史が書かれてある。
 続く第2章は、実際に読者が自分で腹診を試す手引きになっている。特別なものは不要だ。必要なのは、自分の手だけ。その方法は、イラスト入りで理解しやすい。腹診の目的は治療ではなく、自分のお腹を見て、触ることによって、日々の健康管理に活かすことだ。
 第3章で、いよいよ腹診によって自分のお腹の具合を診断していく。症状に応じたツボの見付け方や、漢方薬の効能が解説されていて、ここが本書の中心部分。
 中年男性だとお腹の出具合が気になるところだが、太鼓腹(パツパツ)なのか、カエル腹(ブヨブヨ)なのかによって、出やすい症状や養生方法が異なることが、本書を読むとよくわかる。
 巻末には日々の健康管理に役に立つチェックシートが付いており、役に立つ。健康管理を手軽にやりたい方におすすめの一冊だ。
(日貿出版社、本体1500円)

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2018年5月12日 (土)

<書評>『ゴッドファーザーの血』(マリオ・ルチアーノ著)

11 タイトルだけ見ると、関係者のマフィア世界の暴露本と思われるかも知れない。
 確かに、著者のマリオ・ルチアーノ氏(53)は、イタリア・シチリア島生まれ、そして米NY5大ファミリーのボスの1人だったラッキー・ルチアーノの血族で、NYで暮らしていた9歳からファミリーの「運び屋」もしていた。しかし、14歳にファミリーを抜けNYを出ている。
 もっとも、以降、23歳で訪日するまでパキスタン、フィリピンなど世界各地を転々としている間も、訪日後も長年、ゴッドファーザーの血が呼ぶのか、裏社会と接点を持ち、特にわが国では長年、山口組系の「経済ヤクザ」をしていたという。
 というわけで、本書は、映画「ゴッドファーザー」のモデルにもなった伝説のマフィア血族の自伝だ。
 もっとも、それだけに出て来る人物もアラファト元PLO議長、マルコス大統領、アルカイダ、5代目山口組・渡辺芳則組長、岡村吾一氏から、高倉健、プロレスラーのタイガー戸口など実に多彩。
 とはいえ、決して裏社会を礼賛していない。カネが原因で親兄弟まで含め数々の裏切りに会った挙げ句、見つけた本物は日本人女性との「愛」で、足を洗ったという顛末。
 いずれにしろ、その激動の半生は興味深く、その世界に興味がある者なら一挙に読み終えること請け合いだ。
(双葉社・1500円+税)

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2018年3月28日 (水)

<書評>『地図から消される街ーー3.11後の「言ってはいけない真実」』(青木美希著)

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 福島第一原発事故以来、現場に通い続けた朝日新聞記者の新書。
 避難したものの賠償金打ち切りで生活が行き詰まり、自死に追い込まれる人々。「原発いじめ」に会う子どもたち。現実を無視した「帰還」事業の陰で、事実上、切り捨てられていく避難者の姿がまざまざと迫ってくる。
 とりわけ著者らがスクープした除染作業の実態は深刻で、多重下請構造のもとで作業員の賃金はピンハネされている。内部被曝を強いられても除染の効果は薄い。その一方でゼネコンだけが儲けている。
 政府は東京五輪を前に福島の「復興」を叫ぶが、本書を読むとそれが空しく響くばかりだ。
 政府がこうした「不都合な事実」をもみ消そうとし、大手メディアも報じないため、原発事故が風化しつつある今だからこそ、読んでおくべき本だ。

 

(講談社現代新書。920円+税)

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2017年4月28日 (金)

本の紹介「『和の食』全史・縄文から現代まで 長寿国・日本の恵み」(永山久夫著)

Img153 縄文時代から現代に至る、1万年に及ぶ和食の歴史をたどった本だ。
 もともと日本列島は稲、アワ、そば、大豆、小豆など豊富な植物の種子があった。和食の特徴は、刺身に代表される素材第一主義。それに加え、中国や西洋から渡来した食べ物を、日本人の味覚にあわせて取り込み、独自の“国民食”へと進化させてきたことはよく知られている。
 有名なのは明治のライスカレーだ。ただもっと時代をさかのぼると、例えば「羊羹」は、もともと中国伝来の肉料理だったが、日本で精進料理化して、室町時代には今と同じ「砂糖羊羹」になった。
 戦国時代の武士の食生活も興味深い。一日に黒米が5合。黒米は玄米に近いもので、ビタミンB1が豊富で、疲労回復に役立ち、集中力がアップする。これを朝と夕の2回に分け、汁をかけて雑炊にしたという。
 本書にはこうした事例がイラストを交えて、豊富に書かれている。
 著者は食文化史研究家で、「長寿食研究所」所長。日本各地の長寿の人の食事を現地で調査・研究し、本書のほかにも類書を多く出版している。
 本書を読めば、和食を通して日本史を勉強できるばかりか、何が健康によいのか知ることもできるだろう。(河出書房新社。本体3200円)

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2017年3月29日 (水)

本の紹介『栄養素のチカラ』(ウィリアム・ウォルシュ著。生田哲博士監訳)

Index  人のカラダにとって、日々どのような食べ物を摂取するかが重要なのは当たり前の話だが、最近ではカラダの一部である「脳」にも大きな影響を及ぼすことが知られるようになってきた。例えば“うつ病の原因は間違った食生活にある”といった本が出版されている。
 著者のウィリアム・ウォルシュ氏は、アメリカで栄養療法研究の第一人者として知られている。本書を推薦した宮澤賢史・医学博士によると、「囚人支援のボランティアで殺人犯の脳の分析を行ったのがきっかけになり、20年にわたり2800人のうつ病患者に、延べ3万件の生化学検査を行い、脳の状態を分類した」「また、それぞれのタイプ別に、薬と同様に効果的でしかも副作用が少ない栄養療法を体系化した」という。
 前半部分で、人間には生化学的個体差があり、脳の構造の解明が進んだこと、そして脳に対し栄養素が果たす役割がわかってきたことを述べる。
 その上で、うつ、統合失調症、アルツハイマー病といった精神疾患を生化学タイプ別に分類し、それぞれの生化学にあったタイプ別のオーダーメードの栄養療法を詳細に解説している。
 この精神医学がさらに進歩し、栄養療法が定着すれば、現在使われているような向精神薬は不要になる、といった展望も示されている。そうなれば、精神疾患に悩まされている方への大きな朗報になるだろう。
 ただし、本書冒頭に「この本の情報をもとに自己判断で治療を試みてはならない」と明記されていることをひと言、付け加えておく。
(ら・べるびぃ予防医学研究所発行。本体2778円)

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