本の紹介『こちら歴史探偵事務所! 史実調査うけたまわります』(跡部蛮著。五月書房新社)
歴史研究家の跡部蛮氏の著作は、これまで本紙でたびたび取り上げてきたが、本書はだいぶ趣向が異なっている。
「みよしの歴史探偵事務所」の深吉野良(主人公)が、日本史マニアの女子学生「式部」を助手として、日本の歴史の「よくわかっていないところ」を調査するという筋書き。
この、探偵と助手という組み合わせは昔のドラマでよく見られた懐かしい設定で、一見すると陳腐なのだが、“歴史の裏を追う”のが目的というところがまったく異色。ポップな探偵小説の体裁を借りながらも、歴史研究家としての跡部氏の本領がいかんなく発揮されている。
一例をあげると、「史実調査ファイル06 坂本龍馬暗殺の黒幕は『土佐藩』だった?」。主人公と助手が京都の龍馬暗殺の現場を訪ねつつ、史実にもとづきながら暗殺の真相を推理していく。暗殺したのは京都見廻組で定着しているものの、黒幕については諸説ある。暗殺現場の近江屋と土佐藩邸の位置関係を現場を歩きながら示し、当時の土佐藩内の抗争を踏まえて、暗殺の黒幕は「土佐藩」との大胆な仮説を提示している。
ほかにも放映中のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にちなんで「源平合戦の新説」「北条義時の謎」「鎌倉幕府誕生の本当の年」などを探偵が推理している。日本史の謎、論争点を素人でも気軽に読める本としておすすめ。(本体2100円)
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