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2021年8月

2021年8月23日 (月)

本の紹介『実録 明治学院大学〈授業盗聴〉事件―盗聴される授業、検閲される教科書』(寄川条路編)

51ezhcbzr8s_sx349_bo1204203200_  2015年に起きた明治学院大学の授業盗聴事件(2015年)については、これまでアクセスジャーナル本編でも3回取り上げたことがあるが、本書はその結末までを概括したもの。
 授業を無断録音(盗聴)されたことを大学側に抗議したために懲戒解雇された寄川条路教授が、地位確認を求め東京地裁に労働審判の申し立てをした。大学側は調停案を拒否したため、改めて東京地裁に地位確認訴訟として提訴。2018年、東京地裁は解雇違法の判決を出した。その後、控訴審で和解し、大学側は授業の無断録音を謝罪して和解金を支払った。
 学問や教育の自由に関わる重大裁判であったことから本紙も注目してきたが、本書はその具体的経緯ばかりでなく、大学側の主張やメディアの報道記事も含めて収録した概括的な本となっている。
 この事件が特異なのは、明治学院大学の「キリスト教主義の押しつけ」が強烈なこと。大学の校風に沿わない教員の授業は盗聴までおこない、それを理由に解雇するとは、まさに“中世の魔女狩り”を思わせる。
 本書第5章「新聞報道から」にはアクセスジャーナル記事が転載されている。参考までに紹介しておく。

(1)「いじめ対策せず」元高校女生徒に続き――大学でも「盗聴」に抗議する教授を懲戒解雇し提訴されていた「明治学院」

(2)明治学院大学――授業無断録音に抗議した教授の解雇は「無効」判決(東京地裁)

(3)和解も無断録音につき大学側謝罪――明治学院大学「授業盗聴」事件の結末

(社会評論社。本体1000円)

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2021年8月 4日 (水)

本の紹介『健康リスクから会社を守る!!』(佐藤典久・下村洋一共著。税務研究会出版局)

 51dxnphfapl_sx352_bo1204203200_  中小企業で働く人々の健康管理がますます必要な時代になった。中小企業に対しては、2020年4月から働き方改革関連法が適用されるようになり、2022年4月からはパワハラ防止法も適用される。加えて、昨年から新型コロナウイルス感染症対策に伴いテレワークなど「新しい働かせ方」への対応が日々、経営者に求められる。
 このような時代のなかで、経営者はどのような健康管理体制を敷き、働き方改革を実現しなければならないか。大企業と違い従業員の健康を管理する産業医がいない中小企業では、頭を悩ます経営者も多いのではないか。
 本書は健康診断の活用法や職場の感染症対策、メンタルヘルス、長時間労働者対策など、経営者として知っておかなければならない基本知識が網羅されている。本書副題の「知らなかったではすまされない従業員の健康管理と改正安衛法対策」がそれだ。
 ただそれだけではなく、少子高齢化で人手不足の業界も多い今の時代、高年齢者や障害者を雇用するにあたって、雇う側として注意しなければならないことも具体的に書かれている。
 言うまでもなく、従業員が健康なら生産性も向上するし、不健康なら生産性が低下する。そればかりか経営リスクにもつながる。
 経営者向けに書かれた本ではあるが、中小企業で働く人も自らの健康を守る上で、自分にどのような権利があるのか、知っておいた方がよい。
 株式会社日本産業医支援機構執行役員の佐藤典久氏と労働安全衛生コンサルタントの下村洋一氏の共著。(本体2000円)

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