本の紹介『遺伝子のスイッチ 何気ないその行動があなたの遺伝子の働きを変える』(生田哲著。東洋経済新報社)
本書のテーマである「遺伝子のスイッチ」とは、「エピジェネティクス(epigenetics)」のこと。と聞いても素人には何のことだかわからないが、「DNAにタグをつけたり、つけたタグをはずしたりすることによって、DNAの塩基配列を変化させることなく、遺伝子の働きを変えること」(本書)という。
この研究がいま爆発的に進行中している。それにより、私たちの日常の様々な出来事はこのエピジェネティクスが引き起こしていることがわかってきた。
たとえば、「薬物依存や食べ物依存は本人の意志が弱いから起こるのではないこと、子どもの頃の逆境が大人になってからの生活習慣病の引き金になること、子どもの性格を決めるのは母親による子どものケアであること」がエピジェネティクスを根拠にして、本書で説明されていく。
遺伝子がその人のあり方全てを規定するのではなく、育てられてきた環境によってその人自身が変化していくものであることが、本書を読むとよくわかる。
となれば、その仕組みを知ることは、自分の人生(肉体的、精神的な疾患の予防など)や育児にも役立つわけで、多くの人に読んでほしい本だ。(定価1980円)
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