<書評>「大学の自治と学問の自由」(晃洋書房)
明治学院大学での「授業盗聴事件」は東京高裁で和解になったことは、昨年12月に「アクセスジャーナル」でも報じたが、こうした大学自治や学問の自由に関連するブックレットのシリーズ第三弾「大学の自治と学問の自由」(寄川条路編著)が発売された。
いま大学で何が問われているのか。昨年、文部科学省が「大学入試改革」として民間試験の導入を狙ったが、あまりに拙速で、かつ萩生田光一文科相の「身の丈に合わせてがんばって」発言もあり、取りやめになったのは記憶に新しい。
だが本書を読むと、文科省の進める「大学改革」のもとで大学自治の形骸化が進むとともに、大学コミュニティ内部での権利侵害が、私たちの知らないところで多発していることに驚かされる。
2010年以降に限っても、全国の大学でセクハラ・パワハラ、不正論文問題、スラップ訴訟、教職員の解雇などが多発しており、明治学院大学の事件は氷山の一角に過ぎないことがわかる。
とりわけ深刻なのは、2004年の国立大学法人化以後、「大学ガバナンス改革」が進んだ結果、学長・理事会への権限集中や、「経営力の強化」の名のもとに大学の企業化が進行し、教員の解雇・雇止めがそれまでと比べ圧倒的に増加した、ということだ。
問題なのは、それが「大学の民主主義や学問の自由を擁護する教員への恫喝や見せしめ的処分という性格が少なからずある」ことだろう(第1章 大学における学問の自由の危機とガバナンス問題)。
長い目で見れば、「学問の自由」を失った大学はやがて日本社会全体の劣化を招くに違いない。「大学の現状を正確に把握して、その対策を考えるための実践的な批判書」(まえがき)と言える(本体1000円)。
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