<書評>『明智光秀は二人いた!』(双葉社。跡部蛮著)
来年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公・明智光秀。
ご存知のように、本能寺の変で主君の織田信長を討った「逆臣」として知られるが、その明智光秀に影武者がいたとか、双子だったとかいう説を展開しているわけではない。
既存の「光秀本」の多くは、信長が足利義昭を奉じて上洛する(1568年9月)ころを起点としているという。というのは、明智光秀は戦国時代を代表する武将にもかかわらず前半生に関する信頼すべき史料が一切ないからだ。実は誕生日は不詳とされ諸説ある。もっとも早いのが1516年、遅いのが1528年と12年も違う。いずれにしろ、信長を討った時、信長49歳に対し光秀は55歳か67歳と年上だったわけだ。
そして筆者はこの年の差は、同じような境遇の別の人物を「光秀」と、後の複数の史料が勘違いして記したためにそうなったのではないかと推測している。実際、斎藤道三に関しては、親子2代の国取り物語りが息子1代の国取り物語りにすり替わった説が通説になりつつあるという。
荒唐無稽と思われるだろうが、史料を読み込み、その矛盾を指摘して展開しておりなかなか説得力がある。あくまで読み物と考えれば、謎多き光秀の真相に迫る歴史物、否、ミステリー本としても実に面白い。
1000円+税
| 固定リンク
« <書評>『江戸東京透視図絵』(文・跡部蛮。絵・瀬知エリカ。五月書房新社) | トップページ | <書評>『日本長寿食辞典』(悠書館)、『徳川ごはん』(mores出版)。どちらも著者は永山久夫氏 »
コメント