« 2018年5月 | トップページ | 2018年12月 »

2018年9月

2018年9月21日 (金)

『大東建託の内幕 〝アパート経営商法〟の闇を追う』(三宅勝久著)

41ok8p3ofjl_sx343_bo1204203200_

 大東建託といえば、売上高が1兆円を超す大企業だ。賃貸住宅業界の最大手であり、テレビ・コマーシャルでも名が知られている。しかし本書を読めば、「いまどきこんなブラック企業があるのか」とその実態に驚く。
 本書は自殺まで追い込まれる社員の姿や、詐欺まがいの手法で売上を伸ばすため重い“犠牲”を払わされるオーナー等の、ふたつの側面から大東建託の実態に迫っている。
 前半、顧客とのトラブルで、会社から400万円を自腹要求され、自殺する営業マンや、毎日15時間以上に及ぶ営業に追われ、過労死する営業マンが登場する。遺族にも取材し、そのリアルで悲惨な実態が伝わってくる。
 一方、ノルマを課せられた営業マンから「一括借り上げで家賃保証があるので安心ですよ」と甘い言葉で勧誘されたオーナーが、突然家賃を引き下げられる等、詐欺的な手法で被害を受けた実例も明らかにされた。
 昨年、同社内に労働組合ができたが、その委員長は三宅氏の取材に応じたというだけで減給処分や譴責処分を受けたという。さらには三宅氏にも「名誉毀損」訴訟をちらつかせ恫喝するといった、とんでもない企業なのだ。
 しかし大手メディアは、広告主である大東建託に配慮しているのか、事件化した表面の部分しか取材しない。足掛け9年に及ぶ取材をした、フリージャーナリストの三宅氏だからこそ書けた本と言えるだろう。ぜひ手にとって読んで頂きたい。
(同時代社、本体1500円)

|

2018年9月14日 (金)

『やさしい漢方の本 さわれば分かる腹診入門』(平地治美著)

519ytflnk2l_sx338_bo1204203200__2  著者・平地治美氏は、「アクセスジャーナル」紙上で“健康の勧め”という連載記事を昨年まで計36回にわたって寄稿して頂いたことがある、漢方の専門家だ。
 去る8月、わかりやすいと好評だった『舌診入門』に続き本書『腹診入門』が発売された。
 漢方の診断と言っても、腹診は中国伝来ではなく、江戸時代に独特の発展を遂げた日本独自の診断方法とのこと。第1章でそうした歴史が書かれてある。
 続く第2章は、実際に読者が自分で腹診を試す手引きになっている。特別なものは不要だ。必要なのは、自分の手だけ。その方法は、イラスト入りで理解しやすい。腹診の目的は治療ではなく、自分のお腹を見て、触ることによって、日々の健康管理に活かすことだ。
 第3章で、いよいよ腹診によって自分のお腹の具合を診断していく。症状に応じたツボの見付け方や、漢方薬の効能が解説されていて、ここが本書の中心部分。
 中年男性だとお腹の出具合が気になるところだが、太鼓腹(パツパツ)なのか、カエル腹(ブヨブヨ)なのかによって、出やすい症状や養生方法が異なることが、本書を読むとよくわかる。
 巻末には日々の健康管理に役に立つチェックシートが付いており、役に立つ。健康管理を手軽にやりたい方におすすめの一冊だ。
(日貿出版社、本体1500円)

|

« 2018年5月 | トップページ | 2018年12月 »