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2018年3月

2018年3月28日 (水)

<書評>『地図から消される街ーー3.11後の「言ってはいけない真実」』(青木美希著)

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 福島第一原発事故以来、現場に通い続けた朝日新聞記者の新書。
 避難したものの賠償金打ち切りで生活が行き詰まり、自死に追い込まれる人々。「原発いじめ」に会う子どもたち。現実を無視した「帰還」事業の陰で、事実上、切り捨てられていく避難者の姿がまざまざと迫ってくる。
 とりわけ著者らがスクープした除染作業の実態は深刻で、多重下請構造のもとで作業員の賃金はピンハネされている。内部被曝を強いられても除染の効果は薄い。その一方でゼネコンだけが儲けている。
 政府は東京五輪を前に福島の「復興」を叫ぶが、本書を読むとそれが空しく響くばかりだ。
 政府がこうした「不都合な事実」をもみ消そうとし、大手メディアも報じないため、原発事故が風化しつつある今だからこそ、読んでおくべき本だ。

 

(講談社現代新書。920円+税)

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