本の紹介「『和の食』全史・縄文から現代まで 長寿国・日本の恵み」(永山久夫著)
縄文時代から現代に至る、1万年に及ぶ和食の歴史をたどった本だ。
もともと日本列島は稲、アワ、そば、大豆、小豆など豊富な植物の種子があった。和食の特徴は、刺身に代表される素材第一主義。それに加え、中国や西洋から渡来した食べ物を、日本人の味覚にあわせて取り込み、独自の“国民食”へと進化させてきたことはよく知られている。
有名なのは明治のライスカレーだ。ただもっと時代をさかのぼると、例えば「羊羹」は、もともと中国伝来の肉料理だったが、日本で精進料理化して、室町時代には今と同じ「砂糖羊羹」になった。
戦国時代の武士の食生活も興味深い。一日に黒米が5合。黒米は玄米に近いもので、ビタミンB1が豊富で、疲労回復に役立ち、集中力がアップする。これを朝と夕の2回に分け、汁をかけて雑炊にしたという。
本書にはこうした事例がイラストを交えて、豊富に書かれている。
著者は食文化史研究家で、「長寿食研究所」所長。日本各地の長寿の人の食事を現地で調査・研究し、本書のほかにも類書を多く出版している。
本書を読めば、和食を通して日本史を勉強できるばかりか、何が健康によいのか知ることもできるだろう。(河出書房新社。本体3200円)
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