本の紹介『栄養素のチカラ』(ウィリアム・ウォルシュ著。生田哲博士監訳)
人のカラダにとって、日々どのような食べ物を摂取するかが重要なのは当たり前の話だが、最近ではカラダの一部である「脳」にも大きな影響を及ぼすことが知られるようになってきた。例えば“うつ病の原因は間違った食生活にある”といった本が出版されている。
著者のウィリアム・ウォルシュ氏は、アメリカで栄養療法研究の第一人者として知られている。本書を推薦した宮澤賢史・医学博士によると、「囚人支援のボランティアで殺人犯の脳の分析を行ったのがきっかけになり、20年にわたり2800人のうつ病患者に、延べ3万件の生化学検査を行い、脳の状態を分類した」「また、それぞれのタイプ別に、薬と同様に効果的でしかも副作用が少ない栄養療法を体系化した」という。
前半部分で、人間には生化学的個体差があり、脳の構造の解明が進んだこと、そして脳に対し栄養素が果たす役割がわかってきたことを述べる。
その上で、うつ、統合失調症、アルツハイマー病といった精神疾患を生化学タイプ別に分類し、それぞれの生化学にあったタイプ別のオーダーメードの栄養療法を詳細に解説している。
この精神医学がさらに進歩し、栄養療法が定着すれば、現在使われているような向精神薬は不要になる、といった展望も示されている。そうなれば、精神疾患に悩まされている方への大きな朗報になるだろう。
ただし、本書冒頭に「この本の情報をもとに自己判断で治療を試みてはならない」と明記されていることをひと言、付け加えておく。
(ら・べるびぃ予防医学研究所発行。本体2778円)
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