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2016年1月

2016年1月26日 (火)

書評『愛する人が死ぬ前にやっておくべきこと』(臼井由妃著。日本実業出版社)

51zcbtmqul__sx344_bo1204203200_ 人は誰でもいつかは死ぬ。これは当たり前の話だが、誰もが考えるのを避けてしまう。「余命宣告」を突きつけられた場合ならいざ知らず、自分自身やパートナー、両親などの「死」を普段から意識する人は少ない。
 著者・臼井由妃氏は、30代で会社経営者の男性と結婚。ところがその3ヶ月後に夫が末期の骨髄がんで「余命半年」との診断を受けてしまう。大変な衝撃だったであろう。しかし夫は気丈な方で、動転する著者に対し「僕が死ぬ前にやっておくべきことを、一緒に考えて決めていこう」「納得できる“死に際”を考え、実行するのは、愛する者の共同作業なんだ」と説得したという。
 以後、2人は死というひとつのゴールを意識しながら生きていく。やがて迎えた夫の死で様々な困難を経験するが、いまは「自らの死」を見据えて毎月「会議」を開いているという。
 本書はその経験の記録であり、その経験をもとに導かれた「愛する人が死ぬ前にやっておくべきこと」の具体的アドバイスだ。
 身内の死と言うと遺産相続が思い浮かぶが、残すべきものは資産だけではない、と著者は言う。「思いを伝える、誤解を解く、許す、謝る・・・愛する人のメッセージも『財産』なのです」。
 死と向き合う心構え、本音で相談できるプロの法律家を持つこと、財産の有無にかかわらず「遺言書」を書いておくべきこと、最後を過ごしたい場所を決めておくべきこと、など極めて具体的なアドバイスが参考になる。
「逝く者、残される者、両者にとって『最善の死』を迎えるための準備。それこそが、愛する人がいる、愛されている人の責務なのです」(本体1400円)。

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2016年1月15日 (金)

書評『人は生まれ変われる。前世と胎内記憶から学ぶ生きる意味』(池川明・大門正幸共著。ポプラ社)

51dsaggryml__sx312_bo1204203200_ 出産の現場で「胎内記憶」に取り組む産婦人科医師と、「胎内記憶」の第一人者・池川明氏の共著。池上氏が製作したドキュメンタリー映画「かみさまとのやくそく」については本ブログで紹介したことがある。
「胎内記憶」とは、母親の胎内にいた時の記憶のこと。人間は実は母親の胎内にいる時のことを覚えているが、成長するに従って忘れていく、という説だ。
 さらに、世の中には「前世の記憶」を証言をする子どもたちが存在する。本書には、そうした数名の子どもからの聞き取りが掲載されている。
 こう聞くと、胡散臭いオカルトまがいの話だろうと断定する人も多いだろう。ところが、まだ言葉を覚えたばかりの子どもたちが、見知らぬ土地や家族のことを詳細に語るのを聞くと、何とも神妙な気分になる。
 3歳数ヶ月のある女の子が、あるきっかけで「自分の前世はインド人だった」と母親に語り出し、家族構成や自宅の間取り、近所の様子を説明する。そしてある男が家に放火したことが原因で死亡したと話し、炎や犯人に似た男を見ると、異常に怖がるようになったというのだ。こうした子どもたちの例がいくつか紹介されている。
 そうは言っても、想像力豊かな子どももいるし、これらをもって「生まれ変わり」があるとは断定できない。
 ただ著者の狙いは「胎内記憶」「生まれ変わり」を科学的に証明することにあるのではない。「胎内記憶は子育てや生き方を豊かにするツールのひとつに過ぎません。そして、そのツールをどう使いこなすかは人それぞれです」(前書きより)。生きる意味や親子の関係を考える上で、ひとつのヒントになるだろう(本体1200円)

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2016年1月 8日 (金)

書評『図解 眠れなくなるほど面白い 科学の大理論』(大宮信光著。日本文芸社)

Img113 最近の科学の進歩は急速だ。日進月歩ならぬ「秒進日歩」とも言える速さであり、日本をはじめ世界中で科学者が発見を競っている。これを、ノーベル賞がやっとこさ後追いしているようにも見える。
 しかし、科学のシロウトには新たな発見が何を意味しているのかわかりづらい。大学で理系の勉強をしてきた人ならともかく、基礎的な物理法則すら忘れてしまった人にはなおさらだろう。
 そういう人向けに、図解を使ってわかりやすく科学の理論を教えてくれるのが本書だ。
 まず第1章で、「ips細胞」「ダークマター」「ヒッグス粒子」といった最新の科学理論が紹介される。これらの発見は、22世紀に向けて、実用化など新たな展開をもたらすだろう。
 第2章では、私たちの日常生活で見られる様々な現象を、物理の法則を使って平易に説明。“重い飛行機がなぜ宙に浮くのか”これは、「流れの中では、流れの速さが速いほど圧力は低く、遅いほど圧力は高い」というベルヌーイの定理で説明できる。仕事で欠かせないコピーも、根本の原理は静電気のおかげ。
 そして最終章では、「生命と宇宙の謎」に迫っていく。細胞とDNAの仕組み、ビッグバン理論、宇宙文明方程式といった壮大な科学理論が展開される。
 SF作家で科学ジャーナリストの著者が、難解な理論を屈託のない文体で説明しているのが楽しい。(本体680円)

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