書評『愛する人が死ぬ前にやっておくべきこと』(臼井由妃著。日本実業出版社)
人は誰でもいつかは死ぬ。これは当たり前の話だが、誰もが考えるのを避けてしまう。「余命宣告」を突きつけられた場合ならいざ知らず、自分自身やパートナー、両親などの「死」を普段から意識する人は少ない。
著者・臼井由妃氏は、30代で会社経営者の男性と結婚。ところがその3ヶ月後に夫が末期の骨髄がんで「余命半年」との診断を受けてしまう。大変な衝撃だったであろう。しかし夫は気丈な方で、動転する著者に対し「僕が死ぬ前にやっておくべきことを、一緒に考えて決めていこう」「納得できる“死に際”を考え、実行するのは、愛する者の共同作業なんだ」と説得したという。
以後、2人は死というひとつのゴールを意識しながら生きていく。やがて迎えた夫の死で様々な困難を経験するが、いまは「自らの死」を見据えて毎月「会議」を開いているという。
本書はその経験の記録であり、その経験をもとに導かれた「愛する人が死ぬ前にやっておくべきこと」の具体的アドバイスだ。
身内の死と言うと遺産相続が思い浮かぶが、残すべきものは資産だけではない、と著者は言う。「思いを伝える、誤解を解く、許す、謝る・・・愛する人のメッセージも『財産』なのです」。
死と向き合う心構え、本音で相談できるプロの法律家を持つこと、財産の有無にかかわらず「遺言書」を書いておくべきこと、最後を過ごしたい場所を決めておくべきこと、など極めて具体的なアドバイスが参考になる。
「逝く者、残される者、両者にとって『最善の死』を迎えるための準備。それこそが、愛する人がいる、愛されている人の責務なのです」(本体1400円)。
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