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2015年12月

2015年12月 9日 (水)

書評『缶詰で~男のもっとええ加減料理』(石蔵文信著。講談社)

Img110_3 料理初心者である中高年男性に向けた本『男のええ加減料理』続編。しかし独身者が増えた昨今、「おいしいものを、家で手軽に食べたい」そんな“おひとりさま”全員におススメなのが本書だ。
 缶詰ブームである。非常食として常備しておくと安心だが、ブームの理由はもちろんそれだけではない。「味付けがされているから、調味料が不要」「いつでも好きなときに食べられる」「魚介の缶詰は骨ごと食べられるから、栄養面で優れている」「種類が豊富になった」などの理由があるだろう。
 缶詰レシピの本も増えているなか、本書の特徴は「簡単に、おいしく」。そのため、基本的には土鍋を使用している。土鍋の利点は、「遠赤外線効果で素材の味を引き出す」「保温性が高い」「面倒な洗い物が減る」。ついでに、食卓に上げても土鍋なら抵抗感がない。
 さて、調理時間は最短で5分だ。それは「ねぎ焼き鳥丼」。焼鳥缶と長ねぎ一本あればできてしまう。これなら、調理が面倒で外食に頼っていた人も続けられるはずだ。
 一番調理時間が長いレシピは「ひつまぶし」(50分)。土鍋でご飯を炊くから、これだけはどうしても時間がかかる。これ以外はほとんどが10分~20分で調理終わり。
 中高年向けの料理教室で人気の著者だが、本業は内科・循環器科の専門医。定年後の男性に多い、「うつ症状」の治療の一環として始めたのが料理教室とのこと。

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書評『砂川判決と戦争法案~最高裁は集団的自衛権を合憲と言ったの!?』(旬報社)

Img111_2 年の瀬にあたり今年の国会を振り返るとき、何といっても最大の話題は安保法制関連法の審議だろう。
 連日、国会周辺を数万人の市民が取り囲み、世論の過半数が「慎重・反対」の立場だったが、安倍政権は与党の数の力をもって安保法制を成立させた。これによって「専守防衛」の国是は大きく転換したことになる。
 憲法学者の9割が「違憲」と判断したこの法案だが、安倍首相や関係閣僚が合憲だと主張した根拠が、「砂川判決の最高裁判決」(1959年)だった。
 旧安保条約下の1950年代、日本の集団的自衛権など誰も思いもよらない時代の判決が、(唯一の)法的根拠というのだ。いかに法律のシロウトでも、ムチャクチャだと思う。だが、それを安倍政権は押し通した。
 本書は、いわゆる「砂川事件」の元被告の証言や、砂川判決の分析、安保法制の概要等を10人の弁護士が執筆している。
 砂川事件とは、基地拡張で反対運動が盛んだった米軍の旧立川基地内に、全学連の学生が侵入したとして「日米安保に基づく行政協定に伴う刑事特別法」違反が問われた裁判。一審は駐留米軍=安保条約そのものが違憲であるとして無罪とした(伊達判決)。ところが高裁を飛び越して最高裁(田中耕太郎裁判長)は有罪とした。当時からアメリカの圧力が囁かれていたが、2008年になって、田中裁判長が公判中に米側と密通していたことが、米公文書によって明らかになった。この詳しい経緯と、公文書の一部が本書に載っている。
 安倍政権は苦し紛れに半世紀前の砂川判決を持ち出して、かえって今に続く自民党の対米従属ぶりをみずから暴露したのではないか。

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