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2015年6月23日 (火)

<記録>秘密保護法違憲訴訟の寺澤有(原告)尋問調書

――原告ら代理人(山下)
(甲第10号証を示す)これは寺津さんの陳述書ですね。
寺澤 はい。
――ここに署名と印鑑がありますが、これは御自分で押されたものですね。
寺澤 はい、そうです。
――内容も御自分で作られたと。
寺澤 はい、そうです。
――経歴等はここに書いてある通りということですね。
寺澤 そのとおりです。
――今日は陳述書にないこともお聞きします。寺澤さんはこれまで自衛官に対する取材をしたことがありますか。
寺澤 はい。
――これまではどういう方に取材をしていたんでしょうか。
寺澤 いろんな自衛官あるいは防衛省職員の方に取材しました。
――取材する中で、具体的に取材をした人から情報を頂いたり資料をもらって、それを記事にしたこともあったんでしょうか。
寺澤 はい、そういうことで何回かスクープの記事を書いて、そのうち何個かは国会でも取り上げられるような問題になりました。
――そのような場合、どういうふうな形で、取材を行ったんでしょうか。  寺澤 様々なケースがありますけれども、基本的には現職の自衛官、防衛省職員の中で、こちらの取材の趣旨、そういった公益性が高いことを防衛省や自衛隊が隠していることを表に出したほうが、結局は防衛省、自衛隊のためにもなりますよという、そういう取材の趣旨を理解してもらった上で協力してもらうと、そういうことです。
――具体的にどういう場所で、どういう方法で取材をしたことがありますか。
寺澤 それは様々ありますけれども、例えば防衛省や自衛隊の施設の中にそういったスクープの材料となる証拠物があるということであれば、その方に手引きしてもらって中に入って、その証拠物を写真撮影したりとか、そういうことをしたこともあります。
――最近、秘密保護法が施行された後ですけれども、自衛官を取材したことがありますか。
寺澤 5月14日に安保法制が閣議決定された直後に自衛官の方を取材しました。
――そこではどういうお話が出たんでしょうか。
寺澤 自衛隊員に隊員家族連絡カードというものが配付されて、それはこれまで自衛隊ではなかったそうなんですけれども、非常に細かく、何かあったときのために連絡先を書けということで、第三家族というところまで細かく、自分らの実家、親ですね、あるいは妻のほう、あるいは兄弟、知人、友人関係、そういったものの連絡先を、携帯のメールアドレスまで書かせるというようなことをやって、自衛隊の中で、なんでこんな安保法制の閣議決定のときにそういうものを書かせるんだ、何かあったときのためと、戦争をやったときのためでしょうということで、非常に内部で問題になっているという話を聞きました。
――具体的に寺澤さんはその隊員家族連絡カード、それ自体を見せてもらったり、又はその写しをもらったということがあるんでしょうか。
寺澤 口頭で説明を受けまして、でも口頭では幾ら詳しく説明されてもやっぱり現物を見てみないと報道できないので、現物のコピーを提供してくれというふうにお願いしました。
――それは提供されたんでしょうか。
寺澤 それは非常に、この秘密保護法の関係で、それはできないということで断られたのを、さんざん説得して、ということがありました。
――最終的に何らかのものが提供されたんですか。
寺澤 結局後日、記入例だけ、スマホの画像で、撮ったものをもらいました。
――それでもそれは公表してはならないという。
寺澤 ええ、 しかもそれは絶対にこれをそのままどこかに掲載したりとか、とにかくどこかほかの人に見せるとか、それはやめてくれということで提供を受けました
――これは先ほど、過去の自分の経験で、施設に入って資料を見せられたり、それで、写真を撮ったりしたことがあるという経験から照らすと、今回の対応は以前とは異なっていたということですか。
寺澤 その方はまさに20年、30年、自衛官をやっている方で、その方の手引きで自衛隊の施設に入って証拠物の写真を撮ったことがありますし、そのときに、自衛隊の施設に入るんですから、いろいろ当然止める人がいるわけですよね。そちらさんはどなたさんですかと。それをどうするのかなと思ったら、説得して、連れだからということで、入ったというようなことがありました。
――今、記入例1枚を後でスマホでもらったということですが、以前だったらどういうふうになったんですか。
寺澤 そのようなことまでこちらの取材意図を理解して協力してくれる人なのですから、以前だったら別に、記入例はもちろん、書類一式、どのような実施要綱なのかとか、指示文書なのかとか、一式コピーをくれていたと思います。
――次に警察官に対する取材についてお聞きしたいと思います。
(甲第106号証の1ないし3を示す)これは新聞記事ですけれども、これは何に関する記事ですか。
寺澤 それは2009年6月に、栃木県小山市で発生した強盗事件に関する新聞記事です。
――これは狂言強盗だということだったというんですか。
寺澤 それは2009年6月にパチンコのチェーン店を経営する資産家で、なおかつ朝鮮総連の幹部の豪邸に強盗が入ったという事件です。
――これを取材するきっかけは何だったのですか。
寺澤 これは10人くらい強盗で入っているんですけれども、その主犯格とされる人が、10人目の人、逮捕者が2013年5月28日に逮捕されているんですが、その蔭西誠二という主犯格の方から逮捕直後に手紙をもらって、取材を始めました。その方は、その取材をしてもらいたい趣旨といいますかね。つまりこれはですね、その朝鮮総連の元幹部で、パチンコ店経営の鄭小鎔さんという人なんですけど、この鄭小鎔さんのほうから、北朝鮮に送金しないといけないだとか、原資は脱税の金だとか、そういったものが、庭に30億円だかなんだかドラム缶に入っていると。これをとにかく強盗されたことにしたいので、狂言強盗やってくれという話があったので、そういうことだから、出来レースだからと、 しかも警察の家宅捜索を装ってそういうことをやってくれというふうな依頼があってそれをやったところ、実際にはお金がなかったというようなことだったんです。
――その後警察に捕まったということですか。
寺澤 ええ、その警察もですね、狂言強盗だからということで、本人たちはその10人くらいの人たちは、全くそれはただ演技するだけだと思って入ったところ、庭に現金は埋まってなくて、しかも、なんかこれは話が違うなということで、2、30分で退出するんですけれども、そのときにはもう覆面パトカーが外で何台も待っていたと、それでカーチェイスをやって逃げるというような事件です。
――それで何といいますかね、ここで問題になるのは、この事件が狂言強盗という話ですが、何が一番問題になっているんですか。
寺澤 その鄭小鎔さんのほうの依頼だということで、その主犯格のほうに話を持ってきた人聞がいます。その人間はマツダと名乗っていたそうですけれども、その人間は現場にもいました。ところが、その人間は金属探知機を持ってきて、これは米軍が地雷を見付けるために使っている高性能な金属探知機だと。これを使って庭を探せばドラム缶が埋まっている場所が分かるから、これで掘り起こして、それを掘り出せという指示をして、本人もその現場に金属探知機を持ってきていたんですが、その人間は忽然と消えてしまうわけですね。
――そのマツダなる人物。かれはいまだにどこにいるか分からないと。
寺澤 ええ。その人間は金属探知機だけ持って、車もなぜか置いて、遺留品とかがたくさん積んであるのをわざわざ置いていって、警察のほうに証拠を残すような形で置いていって、それでいなくなっているわけです。
――その方は実際どういう人物だと考えられるわけですか。
寺澤 その方は公安警察官か、公安警察官OBか、少なくとも協力者、スパイであることは間違いないと。で、なおかつその、この新聞記事にもありますけれども、鄭小鎔さんのおうちの隣は栃木県警の官舎ですから、その官舎に歩いていけばいいわけで。
――それで、過去に菅生事件というものがありますけれども、それと似たような構造ではないかということですか。
寺澤 はい。菅生事件、私も過去に取材してますけれども、市木春秋さんと名乗る、本名戸高公徳さんという公安警察官が日本共産党に潜入して、日本共産党員を扇動して、自分でダイナマイトを持ってきて、派出所を、菅生村の派出所を爆破すると、そういう自作自演の事件です。
――(甲第104号証を示す)
だからこの事件と、先ほど言われた狂言強盗事件は似た構造ではないかと。
寺澤 非常に似ているというふうに思います。
――それは、取材に当たって障害になっているというのは、何が障害になっているんですか。
寺澤 つまり消えてしまったマツダなる人物を探さないといけないんですけれども、このマツダさんというのは、明らかに特定秘密に当たる方であろうことが容易に分かるわけですね。
――それが取材の非常に障害になっているということでしょうか。
寺澤 はい。付け加えると、マツダさんというのが、新聞記事からも明らかですけれども、現場にいなかったことになってしまっている。警察の捜査では捜査対象になってないと。しかも、そういった狂言強盗だということを幾ら捕まった人たちが供述しても、警察は一切それを採用しないで、ただの強盗事件として処理したと。
――今それは刑事裁判になっているんですね。
寺澤 今その主犯格の人は無罪を主張して、宇都宮地裁の栃木支部で係争中です。
――(甲第103号証を示す)
これは栃木県で起きた女児殺害事件についての新聞記事ですけれども、現在、寺澤さんはこの事件についても取材されていると
寺澤 取材しています。
――この事件について、どういう点が取材の上で障害になっているんでしょうか。
寺澤 この今市事件は、発生のときもちょっと取材したことがあるんですが、昨年、勝又拓哉さんという方が容疑者として逮捕されて、その後自供したということになっているんですが、物証が全然なくて、恐らく冤罪であろうと思われる事件です。
――今取材する上で何か障害になっていることがありますか。
寺澤 物証がないので、じゃあどうする、どう補うんだという話になっている。勝又被告が死体を遺棄したということになっているんですけれども、この勝又被告が死体を遺棄したというそのルートに、Nシステムというようなカメラが付いているわけです。公安警察官が使っているカメラがあるんですけれども、そのカメラの記録、履歴を調べれば、本当にそこを通っているのか、あるいは本人が、車は通っているけれども、運転していたのは本人なのかとか、そういったことも分かるんですが、まさにこのNシステムというのは、公安警察が1980年代後半からずっと秘匿してきた機械なので、これに触れることは本当にできないという感じです。
――(甲第102号証を示す)
これは何でしょうか。
寺澤 これはそのNシステム、通称Nシステム、自動車ナンバー自動読み取り装置の、どういうふうにこれを運用するかということを定めた警察庁の文書ですね。
――情報公開で取ったんですね。
寺澤 はい。
――これの後ろのほうに第9という、後ろから2枚目、下から4行目にありますが、この最後のところは何が書いてあるんでしょうか。
寺澤 これは今まで、このNシステムというのはそもそもは盗難車両を見付けるために設置してますという大うそを警察庁はついていたんですが、これは公安警察が運用しているもので、今まで盗難車両含めて、いろんなこういう刑事の裁判に証拠で出たことが一切ありません。で、この警察庁の文書を見ても、これによって「判明した事項を、公判に証拠として提出してはならないものとする」と明記されているんですね。そうすると、この先ほどの今市事件の取材において、この点は結局全く裁判の証拠にも出ていないということ。「裁判の証拠には出せない、公判に証拠として提出してはならないものとする」というんだから、そもそも存在しないことにしろというデータなのです。それをこちらは暴いて何とかしようとしているんですから、それは秘密保護法違反に当然なるんじゃないんですかね。
――ということで取材が大変困難になっているということですか。
寺澤 はい。
――先ほど自衛官のケースで施設のほうに入って資料を見せてもらったり、写真を撮ったことがあるということですが、警察官に対する取材においても同じようなことはあったんでしょうか。
寺澤 警察に関する取材でも、警察関係の人の手引きによって、警察関係の施設に入って、警察が不正な会計処理をしているという証拠書類をファイルの中から私が選んで、その部屋のコピー機でコピーして持ち出したということがあります。
――それで、秘密保護法が施行された現在において、警察官に対する取材というのは、以前と比べて何か変わったんでしょうか。
寺澤 以前でしたら、今述べたような今市の事件でも小山の事件でも、取りあえず知っていそうな警察官を当たったりとかする、その他もろもろな手を使って何とか真相を明らかにしようとするんですが、今現在この法律があると、先ほどの自衛官の、長年付き合いがある自衛官の対応を見ても分かるように、ちょっと今、そういった特定秘密を扱っている人間に当たることは非常に危ないと、こちら側が危ないということなので、警察関係には当たらないように取りあえずしてます。
――寺澤さんは今回裁判を、本件訴訟を提起された中心の1人ですけれども、どうしてこの裁判を起こそうと思ったんですか。
寺澤 今、菅生事件の話が出ましたけれども、菅生事件でも、1952年発生の事件ですから、もう60年とか前の事件ですが、その60年前に公安警察あるいはこちらにいらっしゃるような内閣情報調査室の方たちとか、そういったところはそういう謀略をやっていたわけなんですが、今現在においてもそういった謀略、非合法な謀略とか陰謀とか言われるものを現実にこの日本で、この自由な民主主義国家と言われる日本で、やっているということを明らかにしなきゃいけないのです。この秘密保護法という法律は、今述べたように全くそれを許さない法律であると、これはとにかく施行されたら取材ができなくなってしまうということで、あらかじめ差止めなどを求めて提訴していたんですが、実際施行されたらこんな有様だと、もう予想通りの展開ということです。
――それでは主尋問の最後に、これだけは言っておきたいということがあったら言ってください。
寺澤 私は今日3つくらい現在取材中の事例を挙げましたけれども、本当だったらこんなところで今私こんなの取材してますなんて、べらベらしゃべるのは本当におかしいことで、だけど裁判所のほうに、ぜひ違憲判決を書いていただきたいと、そのためにはかなり具体的な詳細な材料を提供しなきゃいけないと思ったので、私、手持ちの札でいえばジャックとクイーンとキングとエースがあれば、クイーンとかキングくらいの札、これ3枚切っているわけですから、ぜひこれは違憲判決を書いていただきたいというふうに思います。
――被告指定代理人(田原)
(質問は)ありません。
――裁判官(平山)
先ほど自衛官の協力者の方がいて取材をされているという例を挙げていただいたんですが、その自衛官の方に取材の目的をとくとくと説明をして協力を得られていたというお話があったと思うんですけれども、取材の目的というのはどういうようなことを説明されるんですか。
寺澤 それはいつの場合ですか。
――過去の場合です。
寺澤 過去の場合、いろんなケースがありますから、自衛隊の中で、例えば、やはり同じような予算の、税金の不正な使用というような事案があった場合に、そういったようなことが自衛隊内で続けられているのは良くないから、1回表に出せばそういう悪い慣行というか、そういうこともなくなるんじゃないですかと。
――過去のは予算の不正使用の事例だ、ったということですかね。
寺澤 いや、もう私も自衛隊のことかなり書いているので、今言ったようなことで、予算、税金の不正な使い方であればそういうふうな説明をしますし、天下りの問題であれば、防衛企業に対する天下りの問題でまた問題があれば、またそれに関して、こうやって天下りして便宜供与を受けてと、こういうようなのは良くないんじゃないかと説得して、それぞれ相手違いますよ、それぞれの人を説得して、協力してくれる人は協力してくれると、そういうことです。
――今回妨げられた例というのは、どういった辺りの話についてということなんですか。
寺澤 どういった辺りって、隊員家族連絡カードですか。
――隊員家族連絡カードについて、どういう点で取材に応じてもらったほうがいいんじゃないかというような説明をされるんですか。
寺澤 安保法制が閣議決定された前後に、何かあったときのためにこれ書きなさいと、さっきは言い忘れましたけれども、その隊員家族連絡カードって、実際スマホで、撮った画像を提供してもらったんですけど、見たところ、かなり詳細に連絡先以外にも書かせるんですね。で、健康状態とか特記事項があるんですよ。その特記事項に書かれている記入例が本人、隊員のお兄さんが精神疾患、丸々病院精神科通院中とか書いてあるんです。だから、要するにそのカードを見たら、全自衛隊員に対して適性評価をやるということだなと私は思ったんですよ。
――今の連絡カードなんですけれども、取材先の方の認識としては、それは一応特定秘密にまでに当たらないというお考えで、あなたのほうにスマホで写真を撮ったもので頂いたんでしょうか。
寺澤 いや、これが特定秘密に当たるかなんて、そんな話をし出したら、向こうは何もしてくれなくなってしまうので、とにかくどんなものか、現物のコピーをくれということを強く要求して、それでどうなのかと思ったら、スマホで、撮った画像の、記入例だけをもらったということです。特に特定秘密かどうかというような話は、することはできない。できないですし、さっきも言いましたけれども、それに関連する文書、絶対あるわけです、こういうふうに記入しろとか実施しろというのは。だけどそれは、とてもそれをもらえるところまではいかない、いってないということですね。以前だったら一式まとめてコピーもらえたと思いますけど。
――特定秘密にそれが当たるかどうかは分からないけれども、当たらないとしてもなかなか取材が難しくなったことの例として今お話を頂いたと。
寺澤 そうです。だから、私、陳述書の中で、ほかの人もそうですけれども、取材を受けるほうは別にこれは特定秘密に関する取材かそれ以外か峻別してやることはできないわけですから、それは取材一切受けないというふうになってしまう、というようなことを述べているかと思いますが、つまりそういうような事態も起きている。私はその附属している文書は特定秘密に触れるものがあると思うけれども、実際にはそういうような対応になっちゃっているということですね。

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