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2015年3月

2015年3月27日 (金)

書評『誤解だらけの〝イヌの気持ち〟-「イヌのこころ」を科学する (zaiten Books』(藤田和生著。財界展望新社)

Img087 今、日本国内でペットとして飼われている犬は、1000万頭を超えるという。しかし私たちは、どれだけ「イヌの気持ち」を理解しているだろうか。愛犬家の方でも、どうしたらもっと良好な関係をつくれるか、悩んでいる人も多いのではないか。
 そういう人に打ってつけなのが本書である。著者・藤田和生氏は京都大学心理学研究室の教授。動物の認知、知性、感情の働きを実験や観察を通じて分析している方であり、いわば「動物の心」研究の第一人者。NHK「おしえて!ガッカイ」という番組で「ペットの本音を知りたい」との視聴者の質問に答えたことがある。
 主要な内容は、研究成果に基づいた「イヌの心」分析だが、具体的に犬と良好な関係を築くためのエクササイズを巻末で紹介している。
 いわゆるペット関連本のような、犬を人間の都合の良いように「しつけ」するという考え方とはまったく異なる。「イヌとしっかりアイコンタクトをする」だけでずいぶんちがうそうだ。愛犬家も目からウロコであろう。

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2015年3月23日 (月)

書評『司法が凶器に変わるとき 「東金女児殺害事件」の謎を追う』(三宅勝久著。同時代社)

Img083 2008年9月に起きた「東金女児殺害事件」。住宅街の路上で5歳の女児が全裸死体で見つかるという衝撃的な事件だった。その後、知的障害をもつ21歳の勝木諒氏が被疑者として逮捕された。
 当初「無実」を訴えた弁護人は突如、辞任。後任の弁護士は「勝木氏が犯人」と認めた。一審判決で懲役15年の有罪判決(後、確定)。「証拠」もそろい、被疑者自身も犯行を認める供述をしていた。
 だが著者は、それでも「勝木氏がほんとうに犯人なのか信じることができなかった」という。
 死因に関する解剖医の鑑定結果が二転三転したり、18キロの体重の女児を片手で担ぎ「ふとんより軽かった」とした勝木氏の不自然な供述。そもそも、知的障害を持つ勝木氏が、「殺人事件の被疑者」という自分の立場を理解しているのかも疑わしい。これは冤罪事件ではないのか――。
 著者は法廷に通い詰め、勝木氏と裁判官、検察官とのやりとりを克明にメモする。その分析から浮かび上がるのは、障がい者差別、司法に対する疑問、そして事件をセンセーショナルに取り上げるだけで検証もしない記者クラブメディアの姿だった。
 著者の三宅氏は、「秘密保護法違憲訴訟」原告の一人でもある。本人のブログはこちら。

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書評『がん治療の最前線 もしあなたや大切な家族ががんと診断されたらどうすべきか』(生田哲著。サイエンス・アイ新書)

Photo 薬学博士・生田哲氏の最新刊は、ずばり「がん治療の最前線」だ。
 がんになったとき多用される標準的な治療法は、「手術、放射線、抗がん剤」の3つとされる。しかしこれら西洋医学の治療は対症療法に過ぎないし、これ以外にもがんと闘う方法はある、と生田氏は力説する。
 そもそもがんの発症は、何が原因なのか? 生田氏は「遺伝子の問題ではない」と言い切る。「中国では、乳がんを発症する女性がとても少ないのです。でも、サンフランシスコのチャイナタウンやハワイに移住した中国人や日本人のがんの発症率は、欧米人と変わりありません。中国の女性はがんに抵抗する遺伝子を持っているのではありません。違いは食べ物にあります」「膨大な疫学データの分析から明らかになったことは、がんの主な原因は食事であるということです」。その医学的な説明が第1章「がんは死の宣告ではない」第2章「がんとはどんな病気なのか?」でなされる。
 がんにならないためには、どのような食事をすべきなのか。第3章「がんの薬になる食べ物」は本書の中心部分で、食材が具体的に紹介される。基本的考え方は「加工していない、未精製の食べ物」(ホールフード)であり、がんを防ぐ野菜や果物の名前とその理由も詳しく述べられており、食材選びの指針になる。
 不幸にもがんにかかってしまった場合にも、がん患者の代謝を改善するサプリメントがいくつか紹介されている(第4章)。
 生田氏は「人体には、がん細胞を発見し、その増殖を抑える、免疫や自然治癒力などの自然のしくみがいくつも備わっている」と述べている。自然治癒力について述べた生田氏の前著『マンガでわかる自然治癒力のしくみ』を併せて読めば、病気を寄せ付けない身体をつくることができるのではないか。

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