書評「古地図で謎解き 江戸東京『まち』の歴史 」 (跡部蛮著。双葉新書。840円+税)
本紙で紹介するのも4回目となるが、歴史研究家の跡部蛮氏の新刊が双葉新書から発売された。
江戸時代から明治維新を経て急激に変貌した東京。その44に及ぶ町の郷土史を、古地図を手がかりとして辿っていく。
「かつて競走馬がかけめぐっていた上野不忍池」「寅さんの町に走っていた不思議な人車鉄道」「光が丘・マンモス団地は首都防衛の拠点だった」といった、知られざるエピソードが盛りだくさんだ。
上野公園では、かの西南戦争が勃発している最中に、国が主催する博覧会が開かれていた。上野公園は代々、博覧会の会場となり、大正時代に入ると上野の山と不忍池を繋ぐ日本初のエスカレーターやロープウェイが登場する。本書には当時の写真が収録されている。
「小伝馬町・富久町」の刑場の歴史も興味深い。江戸時代、小伝馬町にあった牢屋敷。“安政の大獄”として知られる吉田松陰ら勤皇志士の処刑はここで行なわれた。その跡地は、処刑者のうらみを気味悪がって貰い手がつかず、今は公共施設が置かれている。牢屋敷は明治に入り、新宿区に移転し「市ヶ谷監獄」に。そのすぐ隣に「東京監獄」ができると、昭和12年に豊島区巣鴨に移転するまで、ここで死刑が執行された。“大逆事件”で幸徳秋水ら12名が処刑されたのが有名で、刑場だった所はいま富久町児童遊園となり、その一角に刑死者慰霊塔が建っているという。
本書は都心のほぼ全てを網羅している。跡部氏は江戸時代の古地図を使って町歩きをする「江戸ぶら会」会長。町歩き前に本書を読んでおけば、いっそう楽しめること請け合いだ。
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