書評『ウイルスと感染のしくみ』(生田哲著。サイエンス・アイ新書)
医療・科学の進歩により、多くの病原体の抑制には成功してきたが、<人類とウイルスとの戦い>は現在進行形だ。
2002年、中国広東省で突如発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)。感染すると高熱と呼吸困難に襲われる。わずか5ヶ月で世界中に拡大し、感染者の1割に当たる774人が命を落とした。2011年に発生したノロウイルスは記憶に新しい。感染すると腹痛、下痢など急性胃腸炎を発症する。およそ3日間で回復するが、高齢の感染者では死者も出た。そして免疫系を破壊するHIV(エイズ)は2011年末段階で、世界で3400万人が感染しており、治療薬は開発されたものの完治するには至っていない。
このウイルスの脅威に、人類はどう対抗してきたか。本書はまず「ウイルスとはなにか?」から筆を起こし、ウイルス発見までの道のり、人類を襲ってきた様々なウイルスをとりあげ、「ウイルスとヒトとの戦い」で人体の働きと、感染症を防ぐワクチンの発見を解説している。
興味深いのはインフルエンザである。これまで3回もパンデミック(世界的大流行)を引き起こしたが、それでも予防できないのは変異を繰り返すため。著者はインフルエンザに有効なワクチンをつくるのは「原理的にムリ」「ムダであるばかりか、お金もかかり、副作用の危険すらある」と言明する。にもかかわらずワクチンが打たれるのは「(医師が)儲かるから」。
全頁カラー、イラスト入りで、素人にも読みやすい(本体1000円)。
| 固定リンク
「書評」カテゴリの記事
- <書評>『新型コロナウィルス・NEWSウォッチーーコロコロ日記』(ヒグマルコ著。リーダーズノート出版)(2020.05.13)
- <書評>『日本人に合ったがん医療を求めて』(水上治著。ケイオス出版)(2020.03.22)
- <書評>『日本長寿食辞典』(悠書館)、『徳川ごはん』(mores出版)。どちらも著者は永山久夫氏 (2020.01.05)
- <書評>『江戸東京透視図絵』(文・跡部蛮。絵・瀬知エリカ。五月書房新社)(2019.11.17)
- 書評『他人の頭を借りる超仕事術』(臼井由妃著。青春出版社)(2018.12.12)
コメント