書評『初めの一歩は絵で学ぶ 生化学』(生田哲著。じほう)
薬学博士・生田哲氏の最新刊が発売された。
医療関係の仕事をめざす人だけでなく、「医学や薬学に興味があるけど、よい入門書はないか」と探している人にはうってつけの本と言えるだろう。
しかし、一般人にも興味がそそられる項目が多い。
例えば、遺伝情報はどのようにして親から子に受け継がれるのか。それを理解するためにはまず遺伝子が体のどこにあり、染色体がどう構成され、DNAがいかに複製されるのかを、正しく知る必要がある。この本では、その仕組みがイラスト入りで示されているからわかりやすい。
遺伝子のメカニズムを知ることは、健康を維持するためにも必要だ。
誰しも不安な病気である「がん」は、よく知られている通り、遺伝子がダメージを受け、変異することによって無限に成長を始めるという現象。しかしダメージを修復する「p53」という特別な遺伝子も存在する。このためがん治療では、この「p53」を導入することが多い。 そのほかにも「ビタミンやミネラルは必要」ということは誰でも知っているが、なぜ必要なのかと言われれば説明しにくいことも、素人にもわかりやすく教えてくれるのが本書だ。
1953年に遺伝子DNAが発見され、「生命現象を分子レベルで追跡する学問」としての生化学が誕生した。そこからDNA技術が進展し、バイオテクノロジーへと発展して今に至っている。巨大な成長産業となる可能性を持っているバイオテクノロジー。一般人でも知っておいて損はない。(本体1800円)
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