書評『飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白』(杉坂圭介著、徳間書店。本体1500円)
飛田遊郭といえば、大阪市西成区にある歓楽街。昔風に言うなら「赤線地帯」だ。関東の吉原と並び、大正時代からの歴史をもつ一大遊郭地として栄えた。
もっとも、表向きは「飛田料理組合」が仕切る料亭街であり、1958年に施行された売春防止法の適用を免れている。
本書は10年間、遊郭経営に携わった著者が、ほとんど表には知られていない飛田遊郭の内情を語った本だ。
大阪には、いわゆるソープランドはない。大阪府警が「大阪府条例により特殊浴場をすべて許可しない」としたためだ。飛田新地は“料亭業”だったため摘発を免れ、合法となっている。
「基本的には、“料亭”でお客と女の子がお茶とお菓子を飲食していたら、偶然にもたちまち“恋愛関係”に陥ってしまっただけなんやから」(「第1章むきだしの街 新規開業」より)。
失業中だった著者は、あるとき「飛田で店持ったら稼げるで」「うまくやれば月400万から600万くらいになる」と誘われ、遊郭経営に乗り出す。
遊郭経営の仕組み、どこでどうやって「コンパニオン」として女性をスカウトするのか、さらには新人の育て方に至るまで、関係者が語ろうとしなかった飛田遊郭の内部事情が明らかにされる。
これもまた、日本社会の知られざる一段面ではあるだろう。
最近は周辺で高層マンション化が進み、新しい住民から「世間体が悪い」等の苦情が出ている。それにより、警察の恣意的な取り締まりが始まる可能性もあるという。
著者は経営を退き、今はスカウトマンに徹しているという。「なぜ飛田は必要なのか。そのことを考えてもらいたくて、むきだしな街のむきだしな話をむきだしに書いてきました。なにを思うかは読んだ人次第。飛田のことを少しでも考えてくれたとしたら、この本の目的は達成できたと思います」(「おわりに」より)。
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