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2012年3月

2012年3月 7日 (水)

書評『福井大学はなぜ就職に強いのか』(木村誠著。財界展望新社。1680円税込)

Scan0010_3 リクルートの調査によると、今年3月に卒業予定の大学生で、内定をもらった学生は65.6%に過ぎないという(2011年12月現在)。依然、厳しい就職氷河期が続いている。
 こうしたなか、「4年連続就職率全国NO1」の実績を誇るのが福井大学だ。2010年度の就職率は94.7%というから、平均よりずいぶん高い。
 さらに離職率の低さは特筆すべきものがある。入社3年目の離職率は、全国大学の平均で30%なのに対し、福井大は8%にとどまっているという。定着率が高いから、福井大生への企業の信頼が高まり、就職内定率も上昇するという仕組みのようだ。
 福井大学は旧帝大と比較すれば、地方の中堅国立大学に過ぎず、知名度もさほど高くない。その福井大学がなぜ高い就職率と低い離職率を維持しているのか? 本書はその疑問に存分にこたえている。
 社会人としての基礎力を高める多様な取り組み、きめ細かい就職サポート、企業との信頼関係を高める努力等、詳細は本書をご覧いただきたいが、学生の“就業力”を高める福井大の地道な努力がうかがえる。
 もちろん、就職率の高さだけが大学の評価基準ではないのは言うまでもない。しかし学生を丁寧にサポートしている大学は、教育内容も疎かにしていないだろう。
 すでに大学を知名度や偏差値の高さで選ぶ時代は終わった。大学関係者にも一読をすすめたい。

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2012年3月 5日 (月)

書評「信長、秀吉、家康 『捏造された歴史』」(跡部蛮著。双葉新書。800円+税)

Scan0009 前作「信長は光秀に「本能寺で家康を討て!」と命じていた」に続く、戦国歴史トリビア満載の第2弾。
 「関ヶ原の戦い」といえば、徳川家康率いる東軍が、石田光成率いる西軍を打ち破った、天下分け目の決戦としてあまりに有名。通説では、家康の用意周到な作戦によって、たたかう前からすでに勝敗は決していた、といわれる。
 しかし、本当にそうなのか――。著者はこの通説そのものを疑っている。三成の作り上げた作戦は完璧に近かったし、当時の家康は政治的にきわめて危険な立場におかれていた。ではなぜ敗北したのか?
 このように著者は歴史上、通説とされているものに疑問をなげかける。新たに発掘された史実にもとづいた分析が多いから、われわれが教科書や小説や映画などで見聞きした戦国時代の歴史は、実は「捏造」だったのかと目からうろこが落ちる事、間違いない。
 関が原の合戦について詳しく取り上げられているが、そのほかにも、「戦国の三英傑」といわれる織田信長、豊臣秀吉、徳川家康が戦った諸合戦や各人のエピソードが豊富に盛り込まれているので、読み物としてもおもしろい。
 (2012年3月11日発売)

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