書評『福井大学はなぜ就職に強いのか』(木村誠著。財界展望新社。1680円税込)
リクルートの調査によると、今年3月に卒業予定の大学生で、内定をもらった学生は65.6%に過ぎないという(2011年12月現在)。依然、厳しい就職氷河期が続いている。
こうしたなか、「4年連続就職率全国NO1」の実績を誇るのが福井大学だ。2010年度の就職率は94.7%というから、平均よりずいぶん高い。
さらに離職率の低さは特筆すべきものがある。入社3年目の離職率は、全国大学の平均で30%なのに対し、福井大は8%にとどまっているという。定着率が高いから、福井大生への企業の信頼が高まり、就職内定率も上昇するという仕組みのようだ。
福井大学は旧帝大と比較すれば、地方の中堅国立大学に過ぎず、知名度もさほど高くない。その福井大学がなぜ高い就職率と低い離職率を維持しているのか? 本書はその疑問に存分にこたえている。
社会人としての基礎力を高める多様な取り組み、きめ細かい就職サポート、企業との信頼関係を高める努力等、詳細は本書をご覧いただきたいが、学生の“就業力”を高める福井大の地道な努力がうかがえる。
もちろん、就職率の高さだけが大学の評価基準ではないのは言うまでもない。しかし学生を丁寧にサポートしている大学は、教育内容も疎かにしていないだろう。
すでに大学を知名度や偏差値の高さで選ぶ時代は終わった。大学関係者にも一読をすすめたい。
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