書評『イラストでわかる委託・請負で働く人のトラブル対処法』(北健一ら著。東洋経済新報社)
2008年から09年にかけての年末年始、東京・日比谷公園で開かれた「年越し派遣村」を覚えておいでの方も多いだろう。“派遣切り”にあった多くの失業者が炊き出しの列に並ぶ姿は、いつでも解雇されうる派遣という雇用形態の問題性を浮き彫りにした。国会でも労働者派遣法の改正が議論されている。
だが「不安定な仕事」という点では、「委託・請負」という業務形態も派遣に劣らない。たとえば、バイク便のライダー、塾講師、フランチャイズ店店主、ピアノ講師、保険外交員・・・。こうした仕事は、雇用契約書こそ結んでいないものの、実際には企業に使用されているも同然。なかには、人件費を削減するために社員を委託に切り替えるブラック企業もある。「雇用と自営」の曖昧な領域につけ込んで、代金の不払いや契約打ち切り、業務上の傷病、パワハラなどが横行している。
本書『委託・請負で働く人のトラブル対処法』には、具体的なトラブルとその対処事例が掲載されているが、どれも実際に起きたこと。執筆者は、バイク便の「ソクハイユニオン」をはじめ、委託就労者が加盟する多数の組合の結成に携わってきた古山修氏や、フリーランスの記者として現場取材をする傍ら、出版フリーランスの労働相談にも応じている北健一氏など、“現場”で活躍している人たちなので当然、リアルで役に立つ情報が豊富だ。
「自分は正社員だから」という人も、安心はできない。たとえば、本書で取り上げられている具体例で、寮の管理業務を請け負うある会社が、雇用を業務委託に切り替え最低賃金逃れを図った例。あるいは、ある運送業者が従業員の運転手に対し、「雇用契約」と「請負契約」を二重に交わして保険料等の会社負担を軽減した例なども紹介されている。「知らないうちに業務委託契約になっていた」なんてことも実際あるのだ。
本書で詳しく取り上げられているコンビニのフランチャイズ店店主の問題は、巨悪追及の情報ページ、アクセス・ジャーナルでも度々、とりあげてきたが、「オーナー」とは名ばかりでコンビニ本部からひどい搾取を受けているのが実情だ。
本書は、委託・請負、フランチャイズ契約で仕事をしている人はまず読んでおいた方がよい。巻末には労働相談の窓口も多数、掲載されている。おすすめである。(1300円+税)
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