2019年2月 4日 (月)

書評『超真説 世界史から解読する日本史の謎』 (跡部蛮著。ビジネス社)

61zphirkal_sx339_bo1204203200_  歴史研究家・跡部蛮氏の著作は、これまで5回、取り上げたことがある。
 最新刊の本書は、日本の古代から近世に至る歴史的事件を、視野を大きく広げて世界史の観点から関連付けて研究したものだ。
 あの蘇我入鹿を殺害したクーデター「大化の改新」。当時、朝鮮半島は高句麗、新羅、百済の三国に分かれていたが、大化の改新をはさんだ6年間に、三国で同様のクーデターが相次いでいた。
 当時、東アジアでは使節が行き交っていたから、もちろん通信手段の発達した現代とは比較できないにせよ、クーデターの情報が伝わっていたのは当然だ。どのような相互作用があったのか。
 また、史上最強のモンゴル軍に勝ったのは、日本だけではなかった。エジプトも勝っていた。両国とも武家政権だったが、勝った理由には共通点があったという。
 こうした興味深い事実は日本史だけを追っていては知ることができない。「日本史は好きでよく知っているが、世界史はよく知らない」という人にもおススメの好著だ(本体1600円)。

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2018年12月12日 (水)

書評『他人の頭を借りる超仕事術』(臼井由妃著。青春出版社)

51ecljjpdvl_sx350_bo1204203200__2 「仕事が多すぎる。なんとか減らしたい」「同じ仕事を繰り返していて、自己成長につながらない」。こんな気持ちで毎日働いている人も多いだろう。
 病身の夫の後を継ぎ、専業主婦から社長に転身した異色の経営者である著者は、「仕事ができる人は、仕事を全部自分でやらない人だ」「仕事量の8割ほどを人に任せ、残りの2割の仕事に集中する人が大きく成長する」と説く。
 そうは言っても、「人に任せるより自分がやったほうが早い」とか「人に仕事を押し付けて、自分は怠けていいのか」と思う方もいるだろう。
 著者によれば、自分にしかできない仕事の見分け方があり、人への任せ方にもコツがあるという。
 まず「自分の棚卸し」で、自分にしかできない2割の仕事を見出す(第2章)。その上で、仕事の8割をいかにして人に任せるのかを具体的にアドバイス(第3章)。任せる相手はどんなタイプか、どうすれば上手に任せることができるのか。・・・この辺りに著者ならではの経営術が垣間見える。
 本書は2011年発行の『仕事の8割は人に任せなさい!』の改訂版。その間、に急速に発達したSNSをいかに利用するかといった点が追加・修正されている。
 年末に本書を読んで、来年からは新しい仕事術を身につけ、自己成長してみてはいかがだろうか。

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2018年9月21日 (金)

『大東建託の内幕 〝アパート経営商法〟の闇を追う』(三宅勝久著)

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 大東建託といえば、売上高が1兆円を超す大企業だ。賃貸住宅業界の最大手であり、テレビ・コマーシャルでも名が知られている。しかし本書を読めば、「いまどきこんなブラック企業があるのか」とその実態に驚く。
 本書は自殺まで追い込まれる社員の姿や、詐欺まがいの手法で売上を伸ばすため重い“犠牲”を払わされるオーナー等の、ふたつの側面から大東建託の実態に迫っている。
 前半、顧客とのトラブルで、会社から400万円を自腹要求され、自殺する営業マンや、毎日15時間以上に及ぶ営業に追われ、過労死する営業マンが登場する。遺族にも取材し、そのリアルで悲惨な実態が伝わってくる。
 一方、ノルマを課せられた営業マンから「一括借り上げで家賃保証があるので安心ですよ」と甘い言葉で勧誘されたオーナーが、突然家賃を引き下げられる等、詐欺的な手法で被害を受けた実例も明らかにされた。
 昨年、同社内に労働組合ができたが、その委員長は三宅氏の取材に応じたというだけで減給処分や譴責処分を受けたという。さらには三宅氏にも「名誉毀損」訴訟をちらつかせ恫喝するといった、とんでもない企業なのだ。
 しかし大手メディアは、広告主である大東建託に配慮しているのか、事件化した表面の部分しか取材しない。足掛け9年に及ぶ取材をした、フリージャーナリストの三宅氏だからこそ書けた本と言えるだろう。ぜひ手にとって読んで頂きたい。
(同時代社、本体1500円)

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2018年9月14日 (金)

『やさしい漢方の本 さわれば分かる腹診入門』(平地治美著)

519ytflnk2l_sx338_bo1204203200__2  著者・平地治美氏は、「アクセスジャーナル」紙上で“健康の勧め”という連載記事を昨年まで計36回にわたって寄稿して頂いたことがある、漢方の専門家だ。
 去る8月、わかりやすいと好評だった『舌診入門』に続き本書『腹診入門』が発売された。
 漢方の診断と言っても、腹診は中国伝来ではなく、江戸時代に独特の発展を遂げた日本独自の診断方法とのこと。第1章でそうした歴史が書かれてある。
 続く第2章は、実際に読者が自分で腹診を試す手引きになっている。特別なものは不要だ。必要なのは、自分の手だけ。その方法は、イラスト入りで理解しやすい。腹診の目的は治療ではなく、自分のお腹を見て、触ることによって、日々の健康管理に活かすことだ。
 第3章で、いよいよ腹診によって自分のお腹の具合を診断していく。症状に応じたツボの見付け方や、漢方薬の効能が解説されていて、ここが本書の中心部分。
 中年男性だとお腹の出具合が気になるところだが、太鼓腹(パツパツ)なのか、カエル腹(ブヨブヨ)なのかによって、出やすい症状や養生方法が異なることが、本書を読むとよくわかる。
 巻末には日々の健康管理に役に立つチェックシートが付いており、役に立つ。健康管理を手軽にやりたい方におすすめの一冊だ。
(日貿出版社、本体1500円)

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2018年5月12日 (土)

<書評>『ゴッドファーザーの血』(マリオ・ルチアーノ著)

11 タイトルだけ見ると、関係者のマフィア世界の暴露本と思われるかも知れない。
 確かに、著者のマリオ・ルチアーノ氏(53)は、イタリア・シチリア島生まれ、そして米NY5大ファミリーのボスの1人だったラッキー・ルチアーノの血族で、NYで暮らしていた9歳からファミリーの「運び屋」もしていた。しかし、14歳にファミリーを抜けNYを出ている。
 もっとも、以降、23歳で訪日するまでパキスタン、フィリピンなど世界各地を転々としている間も、訪日後も長年、ゴッドファーザーの血が呼ぶのか、裏社会と接点を持ち、特にわが国では長年、山口組系の「経済ヤクザ」をしていたという。
 というわけで、本書は、映画「ゴッドファーザー」のモデルにもなった伝説のマフィア血族の自伝だ。
 もっとも、それだけに出て来る人物もアラファト元PLO議長、マルコス大統領、アルカイダ、5代目山口組・渡辺芳則組長、岡村吾一氏から、高倉健、プロレスラーのタイガー戸口など実に多彩。
 とはいえ、決して裏社会を礼賛していない。カネが原因で親兄弟まで含め数々の裏切りに会った挙げ句、見つけた本物は日本人女性との「愛」で、足を洗ったという顛末。
 いずれにしろ、その激動の半生は興味深く、その世界に興味がある者なら一挙に読み終えること請け合いだ。
(双葉社・1500円+税)

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2018年3月28日 (水)

<書評>『地図から消される街ーー3.11後の「言ってはいけない信実」』(青木美希著)

51kx3fsbel_sx305_bo1204203200_  福島第一原発事故以来、現場に通い続けた朝日新聞記者の新書。
 避難したものの賠償金打ち切りで生活が行き詰まり、自死に追い込まれる人々。「原発いじめ」に会う子どもたち。現実を無視した「帰還」事業の陰で、事実上、切り捨てられていく避難者の姿がまざまざと迫ってくる。
 とりわけ著者らがスクープした除染作業の実態は深刻で、多重下請構造のもとで作業員の賃金はピンハネされている。内部被曝を強いられても除染の効果は薄い。その一方でゼネコンだけが儲けている。
 政府は東京五輪を前に福島の「復興」を叫ぶが、本書を読むとそれが空しく響くばかりだ。
 政府がこうした「不都合な事実」をもみ消そうとし、大手メディアも報じないため、原発事故が風化しつつある今だからこそ、読んでおくべき本だ。

(講談社現代新書。920円+税)

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2018年2月 5日 (月)

お知らせ・薬学博士・生田哲氏のセミナー「ストレスに負けない脳を作る栄養素 」

P_20170723_173316_1_1_11239x300_3  本紙で『よくわかる! 脳にいい食、悪い食』等、たびたびその著書を紹介してきた薬学博士・生田哲氏のセミナーが、来る3月25日、東京都内で開催される。
 生田氏(写真左)は上記のほか80冊以上の著書を有す、日本における「脳の分子栄養学のパイオニア」。その生田氏が「ストレスに負けない脳を作るための栄養学の基本を学びたい方」「この知識を組織や世の中に広めていきたいと思われる方」を対象に、定員10人と少人数かつ双方向のセミナーを実施するそうだ。関心のある方は参加を勧める。

テーマ「ストレスに負けない脳を作る栄養素 」  

■開催日・時間/2018年3月25日(日)

■受付開始/12:30~

■13:00~15:00、15:30~17:30

■会場/ビジネスブレーン東京セミナールーム(五反田)五反田駅より徒歩5分、大崎広小路駅より徒歩3秒

担当講師:生田 哲
受講料(税込):32,400円
定員:約10名

★セミナーの詳細はこちら

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本の紹介・写真絵本シリーズ「それでも『ふるさと』」

Index  フォトジャーナリストで、映画監督でもある豊田直巳氏が、シリーズ「それでも『ふるさと』」と題して、3冊の写真絵本を発行する。
 豊田氏はもともと中東など戦場を取材してきたフォトジャーナリスト。しかし原発事故である種の“戦場”となった福島にその直後からかけつけ、被災地やそこに住む人々を丹念に映像に収めてきた。
 今回のシリーズは、『「牛が消えた村」で種をまく』、『「負けてられねぇ」と今日も畑に』、『「孫たちは帰らない」けれど』の3冊から成る。
 「日本一、美しい村」と言われた飯舘村は、牛が消えた後も畑を耕し、タネを撒く酪農家の姿がある。
 「負けてられねえ」と行者ニンニク栽培を再開する農民夫婦。
 仮設住宅を“第二のふるさと”と住み続けて来た高齢者に、立ち退きの期限が迫る。
 福島第一原発事故から早くも7年目を迎え、事故の記憶も次第に薄れてきた。まるで事故がなかったかのように各地で原発再稼動が進む今、私たち大人が事故がもたらしたものを記憶にとどめるために、そして次世代に記憶を受け継がせるために、この写真絵本はきっと役に立つだろう。
(農山漁村文化協会、各税込2160円。2月8日発売)

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2017年4月28日 (金)

本の紹介「『和の食』全史・縄文から現代まで 長寿国・日本の恵み」(永山久夫著)

Img153 縄文時代から現代に至る、1万年に及ぶ和食の歴史をたどった本だ。
 もともと日本列島は稲、アワ、そば、大豆、小豆など豊富な植物の種子があった。和食の特徴は、刺身に代表される素材第一主義。それに加え、中国や西洋から渡来した食べ物を、日本人の味覚にあわせて取り込み、独自の“国民食”へと進化させてきたことはよく知られている。
 有名なのは明治のライスカレーだ。ただもっと時代をさかのぼると、例えば「羊羹」は、もともと中国伝来の肉料理だったが、日本で精進料理化して、室町時代には今と同じ「砂糖羊羹」になった。
 戦国時代の武士の食生活も興味深い。一日に黒米が5合。黒米は玄米に近いもので、ビタミンB1が豊富で、疲労回復に役立ち、集中力がアップする。これを朝と夕の2回に分け、汁をかけて雑炊にしたという。
 本書にはこうした事例がイラストを交えて、豊富に書かれている。
 著者は食文化史研究家で、「長寿食研究所」所長。日本各地の長寿の人の食事を現地で調査・研究し、本書のほかにも類書を多く出版している。
 本書を読めば、和食を通して日本史を勉強できるばかりか、何が健康によいのか知ることもできるだろう。(河出書房新社。本体3200円)

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2017年3月29日 (水)

本の紹介『栄養素のチカラ』(ウィリアム・ウォルシュ著。生田哲博士監訳)

Index  人のカラダにとって、日々どのような食べ物を摂取するかが重要なのは当たり前の話だが、最近ではカラダの一部である「脳」にも大きな影響を及ぼすことが知られるようになってきた。例えば“うつ病の原因は間違った食生活にある”といった本が出版されている。
 著者のウィリアム・ウォルシュ氏は、アメリカで栄養療法研究の第一人者として知られている。本書を推薦した宮澤賢史・医学博士によると、「囚人支援のボランティアで殺人犯の脳の分析を行ったのがきっかけになり、20年にわたり2800人のうつ病患者に、延べ3万件の生化学検査を行い、脳の状態を分類した」「また、それぞれのタイプ別に、薬と同様に効果的でしかも副作用が少ない栄養療法を体系化した」という。
 前半部分で、人間には生化学的個体差があり、脳の構造の解明が進んだこと、そして脳に対し栄養素が果たす役割がわかってきたことを述べる。
 その上で、うつ、統合失調症、アルツハイマー病といった精神疾患を生化学タイプ別に分類し、それぞれの生化学にあったタイプ別のオーダーメードの栄養療法を詳細に解説している。
 この精神医学がさらに進歩し、栄養療法が定着すれば、現在使われているような向精神薬は不要になる、といった展望も示されている。そうなれば、精神疾患に悩まされている方への大きな朗報になるだろう。
 ただし、本書冒頭に「この本の情報をもとに自己判断で治療を試みてはならない」と明記されていることをひと言、付け加えておく。
(ら・べるびぃ予防医学研究所発行。本体2778円)

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