<本の紹介>『木村和彦の軌跡』(木村浩一郎編)
かつて「アクセスジャーナル」本編で取り上げた『イリーガル探偵社 闇の事件簿』『PCR検査を巡る攻防』(ともにリーダーズノート出版)の著者、木村浩一郎氏の新刊である本書は、タイトルから想像つくように著者の父・和彦氏の人生を追った本だ。
有名人の家族の足跡を辿るNHKのドキュメンタリーシリーズ「ファミリーヒストリー」が人気だ。とくに、母子家庭で育った草刈正雄の、米兵だった実の父に関する意外な事実が明らかになった回は、「神回」と反響を呼んだ。
それに比べると本書は一見、平凡そうなファミリーヒストリーではある。
関門海峡を望む北九州市・門司。昭和6年、同地に生まれた和彦氏は中学生で終戦を迎え、GHQの占領政策が終わった翌年に高校の教諭に。昭和63年に定年退職するまで、「破天荒な、型破りの名物教師」として知られた。「政治も教育も弱いものを守らんといけん。底辺で生きる人から目をそらしたらいけん」(144頁)が口癖だったという。校則を生徒に押付けることに反発し、軽微な行為での生徒の停学や退学には反発していたという。こういう教員、最近ではまったく聞かなくなった。
その人生観には、軍国主義の日本で幼少期を過ごしたことによる反骨精神があるだろう。「平凡な人生」などないことに気付かされる。
(リーダーズノート出版。本体2000円)
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